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日本神経学会代表理事就任のご挨拶
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和泉唯信
日本神経学会 代表理事 徳島大学大学院医歯薬学研究部 臨床神経科学分野 教授
2026年5月20日に横浜で開催されました第67回日本神経学会学術大会時の社員総会において、任期満了に伴う西山和利前代表理事の御退任に伴い、第11代の日本神経学会代表理事を拝命いたしました和泉唯信と申します。就任にあたり改めてご挨拶をさせていただきます。
日本神経学会の長い歴史の中で、冲中重雄初代理事長から西山和利第10代代表理事まで歴代の代表理事/理事長のご指導の下、幾多の先達の連綿と続く努力の積み重ねによって、日本における神経学が確立されるとともに診療向上や、素晴らしい研究成果が成し遂げられて参りました。師と仰ぐ諸先輩方の偉大な道程を途絶えさせることのないよう、はなはだ浅学菲才の身ではありますが、歴代の代表理事/理事長の足跡から学び、会員の皆様とともに日本神経学会発展のため粉骨砕身で努力をいたします。何卒ご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます。
私はこれまで全国の数多くの会員の皆様と対話を重ね、それぞれの立場や考え、日本神経学会に対する思いへの理解を深めてきました。多くのご縁から授かった絆を礎に、若手や中堅の思い切った人材活用を行い、神経学会をよりしなやかで活力のあるチームへと発展させる所存です。
脳神経内科が扱う疾患は脳、脊髄、末梢神経、神経筋接合部、筋のいずれも原因になり、さらに非神経系の原因が神経症状で初発する疾患も扱うため極めて多岐にわたります。また早期診断と治療介入が重要となる急性期疾患、治療法が十分でなく治療研究に取り組む必要のある疾患、慢性経過を辿るためQOLの向上が大きな課題となる疾患など、疾患の特性に応じた課題への対応と、脳卒中の発症・再発やてんかんや片頭痛の発作などのできうる発症リスク低減に尽力することが我々脳神経内科医に課せられた責務です。
そのため代表理事としての任期中に
「急性期から慢性期まで神経疾患のあらゆる時期における診療向上と発症リスク低減につとめる」
ことをミッションにいたします。
そして、ミッション実現のために以下の課題に取り組みます。
①世界に発信できる成果の達成
脳神経内科疾患の診断・治療は私が医師になってからの約30年だけでも飛躍的な進歩を遂げています。しかしながら、まだ十分ではない部分も少なくありません。大きな研究はチームで行われることが多く、私もその研究のいくつかに参加しました。そして日本の共同研究の素晴らしさを、私は筋萎縮性側索硬化症のメコバラミン治験の経験を通して実感いたしました。学会として共同研究を促進するとともに、可能な限りの支援を行います。
②知名度の向上
“脳神経内科”という診療科名の国民に対する知名度向上は、今後の神経学会の発展を左右する重要な課題です。少なくとも医学生全員が入学時に脳神経内科を認識していることが必須です。現状では「脳神経」といえば脳神経外科という認識が未だ一般的であり、これは医学生のみならず国民全体に共通しています。この不当な認知度の低さは医学生や研修医の専攻科選択にも影響します。国民への認知向上を図るため、メディア活用に加え、新たな発想による広報手法を積極的に導入します。これからも増加が見込まれる神経疾患に対応するために脳神経内科医を増やす努力と、脳神経系の症状で困った時に、まず国民から選んでもらえるのが脳神経内科になるように知名度向上を強力に押し進めるつもりです。
③競争力と診療体制の強化
脳神経内科診療の充実には、会員数の拡大と診療体制の強化が必要です。神経症状に対するプライマリケアを担う存在として脳神経内科医を位置づけ、その担い手の増加が国民の健康福祉への貢献につながります。現状では、神経症状を呈した患者が他科を初診とすることで、診断や治療開始が遅れ、患者が不利益を被る事例も少なくありません。認知症や神経難病の新薬が開発されつつありますが、その効果を最大化させるためには早期診断が不可欠なのです。関連各科との連携を維持しつつ、神経症状を呈した患者がまず脳神経内科を受診する体制を構築するため、情報発信力と競争力を高めます。西山和利前代表理事が実施された「脳神経内科/神経内科」標榜の顕彰を継続し、まちの中に脳神経内科を標榜する医療機関が「あたりまえ」に存在するようにします。また、若手からベテランまで、すべての脳神経内科医が誇りをもって神経学会会員であり続けていただけるように取り組む所存です。
④脳神経内科医地域偏在への取り組み
医師の地域偏在問題は報道等で取り上げられますが、診療科の偏在も深刻な問題です。脳神経内科医の地域偏在も著しく、私の活動している四国もそれが顕著です。この問題には学会が介入しにくいことは承知していますが、診察を検査よりも重要視する脳神経内科だからこそ率先して取り組める課題でもあると考えます。先行して取り組んでいる学会があればそれを参考にしたく考えますが、なければその先駆けとして取り組むつもりです。
⑤国民に近い学会の実現
脳卒中、認知症、頭痛、てんかんといったコモン・ディジーズから神経難病まで幅広く対応する脳神経内科医は、国民に近い存在であるべきです。しかし脳神経内科は難病のみを診療しているという誤解も根強く、さらに神経難病には「難しい」「わからない」イメージが強いこともあり、専門性の高い学会としてどこか「縁遠い」印象を持たれがちです。このようなイメージを払拭し、「国民にとって身近な学会」にイメージチェンジしたいと思います。それには従来から実施している市民公開講座だけでなく患者・市民参加の共創型(patient and public involvement: PPI)のワークショップも実践したいと考えています。それを難病に限らずコモン・ディジーズもテーマにして継続して行い、患者の生の声を学会の活動に反映させたいと考えます。
⑥日本脳神経内科医会設立とステークホルダーとの関係強化
2024年の社員総会で日本脳神経内科臨床医会の設立が承認され、2028年の設立に向けて現在準備を進めています。臨床医会は神経学会と不可分の関係にあり、日本の神経学発展に寄与すべき存在になるように発展させていきたいと考えています。臨床医会は、ステークホルダーともいえる厚生労働省、PMDA、行政、政治との関係強化を目的の一つとしていますが、神経学会自体もそれらと連携を深めていきたいと考えています。診療報酬の適正化、望ましい専門医制度、国民の望む脳神経内科診療などを実現するために、ステークホルダーとの連携を強化します。
⑦国際的プレゼンスの向上
神経学会の会員は研究や診療において継続して優れた成果を挙げています。しかしながら、その成果に見合った国際的評価が十分に得られているとは言えません。会員が成し遂げた様々な国際的な研究成果や神経疾患に対する日本の診療の取り組みなどを海外に広く紹介することに取り組んで参ります。またCOVID19流行から内向きになっている若者の行動パターンを再び海外に向けさせる(国際学会での発表、留学、研究協力など)ために、学会がこれまで以上に支援すべきとも考えています。さらにインパクトファクターのついた本学会英文機関誌であるNeurology and Clinical NeuroscienceがPubMed掲載されるように取り組んでいきます。
⑧多職種会員の活動増進
神経学会には多様な職種の会員が所属しています。そのうち、メディカルスタッフの活動は国民に近い学会を実現するためにも不可欠であり、その活動を学会として推進し、向上させるコンテンツの整備を進めます。これによって、すべての職種の会員がそれぞれの立場で自信と誇りをもって活動できる環境を整え、多様な活動のさらなる活性化を目指します。
以上のことは、西山和利前代表理事をはじめ歴代代表理事/理事長が取り組まれた課題であり、私の代でも優先事項として取り組んで参ります。いずれも簡単なものではありません。2年という任期は瞬く間に過ぎていくことでしょう。新理事会メンバーと対話を繰り返し、それぞれの思いを繋ぎ、臨機応変に柔軟に対応することを旨として全力で駆け抜けるつもりです。神経学会自体もワンチームであり、そのチーム員である会員の皆様にも是非とも多大なご協力をお願いいたします。
もちろん、会員、非会員を問わず積極的なご提言も歓迎いたします。ご遠慮なくお声がけください。
末筆になりますが皆様の益々ご活躍ご健勝を祈念いたしまして、就任のご挨拶とさせていただきます。









