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神経内科の主な病気

代表的な神経内科の病気 「頭痛」


頭痛の分類

 頭痛は大きくわけて、脳腫瘍、髄膜炎、脳炎、クモ膜下出血や脳卒中など脳や頭部の病気の症状として出てくる頭痛(症候性頭痛)と、他に病気が隠れているのではなく、頭痛(発作)を繰り返す(持続する)ことが問題である慢性頭痛症に大別されます。

 頭痛の分類方法はいくつかありますが、現在最も広く使用されている分類が1988年に国際頭痛学会が制定した分類と診断基準です。
表1:頭痛の分類の抜粋(国際頭痛学会1988、頭痛研究会邦訳)

1.片頭痛(migraine)

 片頭痛という名称の由来は頭の片側が痛むこととされています。たしかに左右どちらか片側に頭痛が起こる場合が多いのですが、実際には4割ちかくの片頭痛患者さんが両側性の頭痛を経験しておられます。片頭痛は前兆の有無と種類により「前兆を伴わない片頭痛」と「前兆を伴う片頭痛」などに細分類され、以前はそれぞれ普通型片頭痛、古典型片頭痛と称していました。

 前兆は、頭痛より前におこる症状でキラキラした光、ギザギザの光(閃輝暗点)などの視覚性の前兆が多くみられます。その他、半身の脱力や感覚障害(しびれ感)、言語障害などの前兆もあります。通常は60分以内に前兆が終わり頭痛が始まります。漠然とした頭痛の予感や、眠気、気分の変調などは前兆と区別して予兆といいます。

 片頭痛発作は通常4~72時間続き、片側の拍動性頭痛が特徴です。ただし非拍動性の片頭痛、両側性の片頭痛もあります。頭痛の程度は中等度~高度で日常生活に支障をきたします。また、階段の昇降など日常的な運動により頭痛が増強することも特徴のひとつです。悪心(吐き気)、嘔吐を伴うことが多く、頭痛発作中は感覚過敏となって、ふだんは気にならないような光、音、においに不快感を感じる方が多いようです。

 片頭痛の診断は国際頭痛学会の診断基準(表2)を確認して行います。本邦では、成人の8.4%、つまり約840万人が片頭痛にかかっていると報告されています。

 片頭痛の治療は大きくわけて2種類あります。頭痛発作がおこった時になるべく早く頭痛鎮めるための治療法を急性期治療(頓挫療法)といいます。もうひとつは頭痛がない日もあらかじめ毎日お薬を飲んで頭痛発作を起こりにくくし、また、頭痛発作が起こっても軽くすむようにするための予防療法です。発作回数が月に数回以内で、片頭痛発作による生活への悪影響があまりなければ急性期治療を中心にします。発作回数が多い場合や、生活への影響が強ければ急性期治療と予防療法を組み合わせて治療をします。

 急性期治療(頓挫療法)には処方箋なしで購入できる市販薬も含め鎮痛剤が広く使用されています。2000年からはわが国でも、片頭痛の特効薬ともいうべきトリプタン系薬剤(スマトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタンなど)が使用できるようになりました。

 鎮痛剤の上手な使い方としては、頭痛発作のなるべく早期に使用することと、過剰に連用しないことです。連用により鎮痛剤誘発性頭痛といわれる別の頭痛がおこってきます。

 片頭痛に特異的な治療薬としてはスマトリプタンをはじめとするトリプタン系薬剤が注目されています。現在(2002年末)、日本ではスマトリプタン皮下注、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタンの経口錠が使用できます。いずれのトリプタンも頭痛の程度が強くなってからでも治療効果が期待できること、悪心・嘔吐、光過敏、音過敏などの随伴症状の改善も期待できる点がこれまでの他の薬剤より優れている点とされています。今後解決すべき点として、24時間以内の片頭痛再発の問題と心疾患や脳血管障害のある患者さんは使用できないことなどです。医師の処方箋が必要な薬剤ですので、トリプタンの服用に関しては医師、薬剤師によくご相談ください。優れた治療効果を有するトリプタン製剤が本邦でも使用できるようになって片頭痛治療が変わりつつあるといえるでしょう。

 中等度以上の片頭痛発作がある方はトリプタンを第1選択として試してみるとよいでしょう。ただし、トリプタンの効果や副作用は種類(ブランド)によって少しづつ異なるので、何種類かを試みて一番ご自分にあったトリプタンを選択するのがよいとされています。

 トリプタンの登場により片頭痛の効果的な治療ができるようになり、片頭痛による日常生活の支障やQOLの阻害は軽減できるようになりつつありますが、一方で、使用量が増加しトリプタンによる薬剤誘発性頭痛も報告されています。1ヶ月のトリプタン使用量としては10回以内を目安とすべきであるというのが、現時点での専門医の平均的な意見です。月に10回を超えてトリプタンを使用している場合には、予防薬を適切に併用してトリプタンの使用が月に10回以内ですむようにコントロールするべきです。ただし、特殊な片頭痛などで専門医の管理の元で一時的に10回以上使用することは問題ないでしょう。

 多くの片頭痛患者さんがトリプタンの恩恵を受けられるようになってきているのですが、片頭痛患者さんの一部にはまったくトリプタンが効かない方がおられます。専門的にはトリプタンのノンレスポンダーと言いますが、トリプタンの恩恵が受けれない患者さんへの対策も検討していく必要があると考えています。

 血管収縮薬である酒石酸エルゴタミンは、トリプタンにとって変わられつつありますが、トリプタンノンレスポンダーには今後も重要な薬剤です。エルゴタミンは頭痛発作の初期に用いるほど有効率が高く、悪心があるような場合にはメトクロプラマイドやドンペリドンなどの制吐剤を併用するのがよいでしょう。

 頭痛の発作回数が多い場合(月に4回以上)や、頭痛の程度が高度の場合、頓挫療法があまり効かない方は予防療法を併用するのがよいでしょう。また、片麻痺性片頭痛や、脳底型片頭痛、遷延性前兆を伴う片頭痛、片頭痛性脳梗塞など重大な神経障害をおこすおそれのある特殊な片頭痛の場合も予防療法が必要です。

 予防療法の治療目標は、頭痛発作の回数を半分以下に減少させて、頭痛の程度を軽くすること、頭痛の持続時間を短縮し、急性期治療薬の効果を増強して、頭痛による日常生活への影響を最小限にして活動性を改善することとされています。予防療法により頭痛発作が完全に抑制できることもあるのですが、完全に頭痛をなくすことを求めすぎるのはあまり得策ではありません。

 予防療法にはCa拮抗薬やβ遮断薬といわれるや薬剤がよく用いられています。塩酸ロメリジン(ミグシス、テラナス)は片頭痛治療薬として使用されているCa拮抗剤です。その他ベラパミルやジルチアゼムもよく使用されています。β遮断薬ではプロプラノロール、メトプロロールなどがよく用いられています。難治性の片頭痛症の場合には、抗うつ剤、特にアミトリプチリン(トリプタノール)が好んで用いられています。慢性的な痛みのために抑うつ的になることがあるのですが、抑うつ状態でない慢性頭痛の場合にも有効であることが確かめられています。

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2.緊張型頭痛(tension-type headache:TTH)

 緊張型頭痛は反復発作性(月に15日未満)と慢性(月に15日以上、6ヶ月以上)に分類されています。各々、頭部筋群の異常を伴うものと伴わないものに細分類されています。頭痛は30分から7日続き、圧迫されるような、あるいは締めつけられるような非拍動性の頭痛で、多くは両側性です。頭痛の程度は軽度~中等度で、頭痛のために日常生活に支障が出ることはあっても寝込んでしまうようなことはありません。(診断基準:表3

 緊張型頭痛の原因としては、口・顎部の機能異常、心理社会的ストレス、不安、うつ、妄想や妄想概念としての頭痛、筋性ストレス、頭痛に対する薬剤乱用などがあげられます。

 反復発作性緊張型頭痛には鎮痛剤が有効です。鎮痛剤の使用が月に数回程度の方は通常、予防薬の必要はありません。頓用薬として、筋弛緩作用を合わせ持つ抗不安薬(エチゾラム、ジアゼパムなど)を鎮痛剤と併用するとよいこともあります。

 慢性緊張型頭痛では予防的に抗不安薬や抗うつ剤が用いられています。筋弛緩剤(チザニジンなど)の併用が有効な例もあります。緊張型頭痛における抗不安薬使用に関しては賛否両論あるのですが、いずれにしても長期連用はさけるべきとされています。

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3.群発頭痛(cluster headache)

 群発頭痛は眼周囲~前頭部、側頭部にかけての激しい頭痛が数週から数ヶ月の期間群発することが特徴です。夜間、睡眠中に頭痛発作がおこりやすく、頭痛発作時には眼の充血や流涙、縮瞳と眼瞼下垂(まぶたが下がること)などの症状を伴うことが多いのも特徴です。

 群発頭痛は、頭痛発作が群発することが頭痛名の由来ですが、現在では頭痛の性状と随伴症状に主眼がおかれていて、寛解期(頭痛がまったくおこらない時期)のないものを慢性群発頭痛といいます。(診断基準:表4

 群発頭痛の発生率は人口10万人当たり9.8人と比較的少なく、一般の方は勿論のこと医師の間でもあまり認知されていないタイプの頭痛です。激しい頭痛発作で複数の病院を受診されてもはっきりと診断してもらえないことがあるようです。多くの群発頭痛患者さんは、正確な診断を受けるまでに数年以上の年月がかかっていると言われています。群発頭痛の知識を持っている医師は比較的容易に診断ができますので、類似の頭痛をおもちのかたは神経内科専門医を受診してください。

 群発頭痛は20~30才代に多く約85%は男性とされていたのですが、最近の欧米の調査では男女差が縮小してきて女性の群発頭痛も稀ではなくなっているとされています。1回の頭痛発作は15分~180分続き、2日に1回~1日8回(大部分は1日に1~3回)の頻度でおこります。

 群発頭痛の治療に際しては、まず患者さん御自身が群発頭痛について知識を得て理解すること(つまりは医療側からは十分な患者教育を実施すること)、頭痛発作時の対症療法と予防療法をうまく組み合わせて行うことが重要です。

 頭痛発作時の治療としては酸素吸入(マスクで純酸素7-10L/分、15分間)、スマトリプタンの皮下注射が効果的です。群発頭痛の発作に通常の鎮痛剤は無効です。酒石酸エルゴタミンも頭痛発作が起こってから使用してもほとんど効果がありません。

 群発期には予防療法が必須です。頭痛発作はほとんど毎日繰り返し起こり、1回の頭痛発作は比較的短時間であるため、頓挫薬のみでは十分な治療が困難だからです。

 群発期初期の予防療法にはエルゴタミン、ステロイドが用いられています。睡眠中に頭痛がおこる場合には酒石酸エルゴタミンの眠前の内服が奏効します。ただしエルゴタミンとトリプタンは24時間以上の間隔をあけて使用する必要があるので注意が必要です。維持的予防療法としては保健の適応が未承認ですがベラパミルが最もよく使用されています。炭酸リチウムも有効とされていますが治療域が狭い薬剤なので高用量を使用する場合には血中濃度をモニターしておく必要があります。

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4.いろいろな病気に伴う症状としての頭痛(器質疾患による頭痛)

 頭痛がして心配しておられる場合、多くの方は脳に何か異常がおこったのではないか、脳の悪性の病気、怖い病気にかかったのではないかということを心配されてるようです。頭痛が主な症状となる病気には多くのものがありますが、代表的なものとして、クモ膜下出血をはじめとする脳血管の病気、脳の腫瘍や感染症などがあります。ひどい頭痛がする場合や、頭痛が長く続く場合は一度専門医の診察を受けておくとよいでしょう。特に急におこった頭痛で、これまでに経験のないひどい頭痛の場合はすぐに専門医に受診してください。命にかかわる危険な頭痛の可能性があります。

 慢性的に頭痛がある場合や、お薬を使用してもあまりよくならない場合には、脳のCT、MRIや副鼻腔、頸椎のX線検査などを一度は実施してもらっておかれるのがよいでしょう。眼科疾患、歯科・口腔外科疾患、耳鼻科疾患の他、貧血や肝障害、甲状腺疾患など内科の病気が原因で頭痛がおこる場合もあります。

 頭痛をおこしやすい様々な疾患についてポイントを表5にまとてあります。

 頭痛の始まり方が脳血管に由来する頭痛の診断の参考になります。くも膜下出血に伴う頭痛の特徴は頭痛が起こり初めてからピークに達するまでがきわめて短時間であるのに対し、片頭痛では少なくとも5分、通常は20~30分かかることで区別がつきます。ただし、まれには例外もあって、突然頭痛が起こった後、徐々に頭痛の程度が強くなるクモ膜下出血もありますので、これまでに経験のない激しい頭痛の場合は、やはり専門医に御相談ください。良性労作性頭痛は運動時などに急におこる激しい頭痛で、症状からはクモ膜下出血と区別できないことがしばしばあります。良性労作性頭痛は病名にもあるとおり、命にかかわることのない良性の頭痛です。

 脳底部に病変があると後頭部に、大脳半球の病変では前側頭部に頭痛がおこりやすいとされていますが、必ずしも一致しません。眼痛を眼周囲の頭痛と感じることがあり、前頭部や眼周囲の頭痛では眼の病気の可能性も考えておく必要があります。副鼻腔炎(蓄膿)や副鼻腔周囲・頭蓋底の腫瘍などでも眼周囲、前頭部の頭痛がおこることがあります。逆に眼周囲の頭痛を眼の病気と考えて眼科に受診されている場合も少なくありません。側頭下部~耳介部の頭痛の場合には、ヘルペスや耳疾患、側頭動脈炎などの可能性もあります。

 脳腫瘍などによる頭蓋内圧亢進(脳圧亢進)の頭痛では嘔吐する割には悪心(吐き気)が軽いことが多いのが特徴です。嘔吐した直後でも普通に食事ができるような場合には頭蓋内圧亢進による頭痛を疑います。また、朝、目覚めた直後に強い頭痛の場合にも慢性頭蓋内亢進のことがあります。

 頭痛に伴って半身麻痺(片麻痺)、四肢麻痺、感覚障害や失語など脳の異常でおこるような症状(局所神経兆候)がある場合には注意が必要です。頭痛とこれらの症状の出現順序も重要です。前兆を伴う片頭痛では通常、前兆としての神経症候が消失してから頭痛が起こりますが、脳の器質疾患では同時に起こることが多いとされています(ただし例外もあります)。

 発熱の有無は髄膜炎や脳炎の診断に重要なポインですが、脳炎の初期には発熱が目立たないこともあります。

 最近数ヶ月以内に頭部を打撲したことがあるかどうかも大切です。慢性硬膜下血腫は頭部打撲後数ヶ月してから症状が出ることがあります。常習飲酒者ではご本人が記憶していなくとも、酩酊時に頭部打撲をしておられることがあります。

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5.薬剤性頭痛、頭痛を誘発する食品

 頭痛を誘発する薬物や物質、食品が多く知られていますが、なかには迷信に近いものもあります。国際頭痛学会の診断基準では原因と認定するためには、その物質(薬物)を摂取後、12時間以内に頭痛がおこり、その物質を摂取した場合の半数以上(かつ3回以上)頭痛がおこることと規定されています。チョコレートは頭痛を誘発すると言われているのですが、二重盲検試験という方法を用いた科学的な研究ではプラセボ(偽薬)と本物のチョコレートの頭痛誘発の頻度に差が無かったと報告されています。

 亜硝酸、硝酸は頭痛を誘発することが確認されています。ホットドッグ頭痛(ホットドッグを食べた後の頭痛)といわれたものはソーセージの保存料として当時使用されていた亜硝酸、硝酸によるものと考えられています。

 グルタミン酸ナトリウムは化学調味料として多用されていますが、過剰摂取により、胸部圧迫感、不快感、顔面紅潮、腹部不快感などと共に頭痛をきたし中華料理店症候群と呼ばれています。

 アルコールも頭痛を誘発します。特に赤ワインは片頭痛を起こしやすいことで有名です。

 薬物としては、アトロピン、ジギタリス、イミプラミン、ニコチン、ニフェジピン、ニトロプルシドなど多数の薬剤が頭痛を誘発することが知られています。経口避妊薬や女性ホルモン(エストロゲン)も頭痛を誘発する物質として挙げられています。

 頭痛の誘引となっていることが明らかであればその薬剤や原因物質の摂取を避けることで頭痛を予防できます。ただし食物に関しては個人差が大きいのであまり気にしすぎないことも大切です。

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6.頭痛薬の過剰使用に伴う頭痛

 頭痛の治療薬として使用している鎮痛剤やエルゴタミン製剤を過剰に慢性的に使用すると元々の頭痛とは異なる型の頭痛がおこってきます。鎮痛剤誘発性(乱用性)頭痛、エルゴタミン誘発性頭痛、薬剤乱用を伴う慢性連日性頭痛などと称される頭痛です。

 鎮痛剤、あるいはエルゴタミンを3ヶ月以上連用(乱用)すると、月に15日以上頭痛をきたすようになり、これらの薬剤の使用を中止すると1ヶ月以内に頭痛が消失します。

 鎮痛剤乱用による頭痛はアスピリンを1ヶ月に50g以上(バファリン、1日5錠を毎日内服に相当)又は、他の鎮痛剤、NSAIDsで相当量を使用した際に起こりうるとされています。

 エルゴタミンによる頭痛は、毎日2mg(2錠)以上のエルゴタミンを連用した際に起こり、頭部全体の拍動性の頭痛ですが、発作性が不明確なこと、随伴症状を伴わないことで片頭痛と区別が可能です。

 鎮痛剤、エルゴタミンは頭痛の治療のために用いる薬剤でこれらが頭痛の原因になっている点が問題です。使用を中止すれば元来の頭痛には戻るのですが、患者さんは頭痛がするから使用しているので、薬を飲むから頭痛が悪化しているということを説明してもなかなか理解していただけないことが多く、こじれて難治性になることが多いのです。薬剤性頭痛の可能性があるかもしれないと感じたら早めに専門医に相談してください。

 2003年の改訂国際頭痛学会の頭痛分類と診断基準では慢性片頭痛のカテゴリが設けられ、薬剤、原因物質に関連した頭痛の項にはトリプタン過剰使用による頭痛の項が加わります。

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頭痛のメカニズム

 頭痛を感じる理由についても科学的な解明がすすみつつあります。頭痛に限らず痛みは大きくわけて3種類に分類することができます。第1は、炎症や圧迫など痛みを感じる部位に有害な刺激が加わった結果の痛み(専門的用語では侵害受容性疼痛といいます)、第2は神経がなんらかの異常をきたし必ずしも有害な刺激がないのに痛みを感じるもの(神経因性疼痛)、第3は、有害な刺激や神経の異常がないのに心の問題で脳が痛みを感じている場合(心因性疼痛)に分類されています。多くの頭痛は第1の侵害受容性疼痛に分類されるもので、最初の有害な刺激の起こり方、作用の仕方などにより頭痛の種類が分類されています。

 頭部の組織のうち、頭蓋外(頭蓋骨の外側)の皮膚、筋肉、血管はどの場所も痛みを感じることができる痛覚受容器が存在します。皮膚の刺激は限局した痛みとして感じられますが、血管が刺激されると、より広汎な部位に痛みを感じます。

 頭蓋の骨組織は痛みを感じませんが、骨の表面の膜(骨膜)は痛みを感じます。頭蓋内では、脳そのもの(脳実質)は痛覚受容器がないため痛みを感じません。静脈洞や脳硬膜に分布する動脈、脳底部の動脈などが痛みを感じます。頭蓋内の組織が刺激されると、その場所の痛みとしてではなく頭蓋外が痛いと感じます(関連痛といいます)。

 従って、頭痛のメカニズムとしては1)痛覚感受部位に炎症がおこった場合、2)痛覚感受部位(静脈洞、動脈など)が圧迫されたり、引っ張れたり(牽引)した場合、3)脳動脈が伸展したり、拡張したり、あるいは炎症を起こした場合、4)頭部、頚部の筋肉が持続的に収縮している場合、5)頭蓋から出てくる脳神経や上部頚髄を出る脊髄神経が圧迫された場合などが代表的です。

 片頭痛(migraine)のメカニズムは徐々に解明されつつあります。古典的な片頭痛の病態仮説には血管説とセロトニン学説があります。

 片頭痛の病態にセロトニン(5-hydroxytryptamine、5-HT)が関与していることは1960年代から知られていました。セロトニンは強力な血管収縮物質ですが、片頭痛発作時にセロトニンの代謝産物である5-hydroxyindol acetic acid(5-HIAA)が尿中に大量に排泄されることが明らかとなりました。一方、片頭痛発作中には血液中のセロトニンの濃度が低下していることが明らかとなりました。そして、セロトニン放出作用のあるレセルピンの注射により片頭痛様の発作が誘発されること、片頭痛発作時にセロトニンを投与すると頭痛が軽快することが示されました。

 血液中のセロトニンの大部分は血液中の血小板に貯蔵されており、必要に応じて血小板から血液中に放出されたり、再度血小板に取り込まれています。片頭痛におけるセロトニンの動態については、相反するデータもあり議論が多いところではありますが、以下のような解釈が広く受け入れられています。

 最初になんらかの刺激により、血中の血小板からセロトニンが放出され、放出されたセロトニンが他の血小板を刺激するという連鎖反応がおこり、血中のセロトニン濃度が急激に上昇します。この時期、高濃度のセロトニンが血管収縮を引き起こし片頭痛前兆が起こると考えられます。しばらくすると血中のセロトニンが急速に代謝され5-HIAAとして尿中に排泄され、相対的に血中セロトニン濃度が低下し血管拡張をきたして拍動性頭痛がおこるとするものです。血管拡張に主眼を置いた場合を片頭痛の血管説、セロトニンの役割を強調したものがセロトニン学説です。また、血小板の役割を重視した立場からは片頭痛の血小板説と呼ばれることもあります。

 現在最も広く受け入れられている仮説は三叉神経血管説(trigemino-vascular theory)です。片頭痛治療薬のスマトリプタンの薬理研究に裏付けられた理論です。三叉神経と頭蓋内血管、特に硬膜血管周囲の三叉神経終末に神経原性炎症がおこるということを重視したものです。神経原性炎症により血管内では血小板が刺激され前述のセロトニンの放出反応などがおこるものと考えられています。

 最近注目されている仮説としてチャンネル病説(Channelopathy)があります。片頭痛の特殊型として家族性片麻痺性片頭痛という遺伝性疾患があります。前兆を伴う片頭痛の診断基準を満たし、前兆のひとつに片麻痺が含まれ、かつ第1度近親者(親、兄弟、姉妹、子)に少なくとも1名の同様の発作をもつものと定義されています。症状は家系により差があり、眼振や小脳萎縮がある家系、けいれん、意識障害を伴う家系などが知られています。

 遺伝子研究により家族性片麻痺性片頭痛の約半分はカルシウム・チャンネルの遺伝子の異常でおこることが見出されています。このような成果から、片頭痛は細胞に存在するイオンチャンネルの異常による疾患であるという考えです。

 群発頭痛(cluster headache)のメカニズムはあまりよくわかっていません。内頚動脈の拡張・血管壁の浮腫の結果、血管周囲の交感神経が一過性に障害されてホルネル症候群(縮瞳と眼瞼下垂)がおこります。以前は血管の拡張が群発頭痛の一次的原因と考えられていました、最近は三叉神経核から上部頚髄の一側性の活性化がおこりその結果として内頚及び外頚動脈系の血管拡張がおこるとの考えが有力です。

 緊張型頭痛(tension-type headache)は以前の筋収縮性頭痛に相当します、明らかな筋収縮を伴わないものも含まれます。痛みは頭蓋外~項部の筋収縮に伴う痛みが主体と考えられています。持続的はな筋収縮により筋肉の循環障害をきたし、発痛物質が放出され、痛みがさらに筋収縮を引き起こすという悪循環を形成していると理解できると思います。過剰な筋収縮を誘発する因子のうち緊張型頭痛に特有のメカニズムとして、頚椎支持性が低下していることと長時間のうつむき姿勢が注目されています。

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