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バルプロ酸の片頭痛への適用承認に関する会員からのご質問と回答

会員から、バルプロ酸の片頭痛への適用承認に関してご質問をいただきましたので回答いたします。

質問内容:
診療向上委員会から、2010年12月20日、日本神経学会のホームページに、「片頭痛患者のバルプロ酸血中濃度測定が承認されました」と報告されました。バルプロ酸は小発作、焦点発作、精神運動発作など各種てんかんの治療薬として知られている。拍動性血管性頭痛を主症状とする片頭痛の診断が正確に行われていないのではないかと疑われる。薬剤性肝障害の発生を避けるためにも、神経内科的に、その病因診断、病巣診断において、てんかんと異なる正確な片頭痛の診断が必須である。
回答:
神経学会のホームページにコメントをお寄せいただきありがとうございました。
バルプロ酸は、片頭痛の予防療法薬として、1990年代から7件以上の二重盲検試験でプラセボより有意に片頭痛の発作回数、発作強度を軽減することが示されており、欧米では標準的な薬剤として使用されています1)
また、片頭痛は単なる症状名ではなく、国際頭痛分類第2版2)で診断基準が明示されており、疾患として確立した概念です。片頭痛はQOLを著しく阻害する治療が必要な疾患でありますが、欧米と比較して本邦ではまだ十分に認識がなされていない現状があります。欧米とのドラッグ・ラグの解消のため、以前より神経学会と頭痛学会から共同でバルプロ酸の片頭痛への適用拡大を要望して参りました。今回、この成果として、片頭痛の予防療法におけるバルプロ酸の保険適用が認可されたものです3)。ご指摘の、バルプロ酸による肝障害の発生等の有害事象を回避するためにも、神経内科診療におきまして、国際頭痛学会の診断基準に則り適正に片頭痛の診断がなされ、病状を把握した上で適正に処方される必要があるものと考えられます。
また、てんかんと片頭痛の関係は相互に重要な共存症でありますが、てんかんを共存症として持たない片頭痛においても、バルプロ酸は有効です。片頭痛の疼痛は三叉神経血管系の神経原性炎症が中心的な病態ですが、バルプロ酸は実験的に神経原性炎症を抑制し、侵害受容性疼痛の伝達を抑制することが示されています4)。また、近年、片頭痛における、皮質拡延抑制の役割が注目されていますが、バルプロ酸が皮質拡延抑制の発生を抑制することも明らかにされています5)。バルプロ酸の抗片頭痛作用のメカニズムはまだ十分に解明されているわけではありませんが、片頭痛の病態の複数のステップでその効果を発揮しているものと理解されています。
神経内科領域における片頭痛の的確な診断とバルプロ酸を含め各々の患者に最適な治療法の選択がなされ、片頭痛患者のQOLが改善されますよう、益々のご尽力をお願いいたします。

日本神経学会診療向上委員会

参考文献)

  1. 慢性頭痛の診療ガイドライン:抗てんかん薬(バルプロ酸)は片頭痛の予防に有効か.日本頭痛学会編、 東京: 医学書院; 2006、p120-122.
  2. 国際頭痛分類第2版、1. 片頭痛。日本頭痛学会・国際頭痛分類普及委員会訳、新訂増補日本語版、 東京: 医学書院; 2007、p2-17.
  3. 神経学会お知らせ:デパケンR(バルプロ酸ナトリウム)の片頭痛への保険適用が可能となりました
  4. F. M. Cutrer, V. Limmroth, and M. A. Moskowitz. Possible mechanisms of valproate in migraine prophylaxis. Cephalalgia 17 (2):93-100, 1997.
  5. C. Ayata, H. Jin, C. Kudo, T. Dalkara, and M. A. Moskowitz. Suppression of cortical spreading depression in migraine prophylaxis. Ann.Neurol. 59 (4):652-661, 2006.

その他の参考URL:

神経学会、慢性頭痛治療ガイドライン
http://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/zutuu_02.pdf
頭痛学会、国際頭痛分類、慢性頭痛の診療ガイドライン
http://www.jhsnet.org/gakkaishi/jhs_gakkaishi_31-1_ICHD2.pdf
http://www.jhsnet.org/GUIDELINE/top.htm

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