臨床神経学

症例報告

環軸椎亜脱臼と環椎形成不全を含めた全身奇形を伴い,頸部回旋による接触刺激により椎骨動脈の血栓性閉塞を来した若年性脳梗塞の1例

谷口 葉子1), 北村 太郎1), 武藤 昌裕2), 三浦 敏靖1), 山田 健太郎1)*

Corresponding author: 名古屋市立東部医療センター脳神経内科〔〒464-8547 名古屋市千種区若水一丁目2番23号〕
1) 名古屋市立東部医療センター脳神経内科
2) 名古屋市立東部医療センター放射線科

症例は頭痛を主訴に受診した23歳男性.構音障害と小脳失調を呈し,頭部MRIで右延髄外側,右小脳および両側後頭葉に急性期脳梗塞を認めた.環軸椎亜脱臼と環椎形成不全および右椎骨動脈(vertebral artery; VA)の閉塞がみられ,頸部回旋に伴う血流の途絶は認めなかった.軸椎歯突起が右VA に接しており,くり返す接触刺激によって内膜損傷を来し閉塞に至ったと考えられた.本例では心房中隔欠損症や環椎後弓低形成,Bovine型の左総頸動脈分岐奇形,重複下大静脈や馬蹄腎など種々の全身奇形を合併しており先天症候群であった可能性がある.
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(臨床神経, 60:609−613, 2020)
key words:若年性脳梗塞,環軸椎亜脱臼,Bow-hunter症候群,先天奇形

(受付日:2020年2月1日)