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投稿をお考えの方へ

編集後記より

 長崎大学医学部記念講堂の庭には,初代第一内科教授・角尾晋先生(1892〜1945,東大卒銀時計組,原爆で死亡)の胸像の横に「Der wissenschaftliche Geist」と刻まれた先生直筆の石碑(1939年卒業記念)があります.この言葉は「科学(的)精神」と訳されています.以前の私は問題解決に向けた「リサーチ・マインド」のことだと捉えていました.しかし,角尾先生の「旧患者を診ること尚新患の如くあれ」など当時の先生の文献等を調べてみると,その解釈は間違いであることに気が付きました.wissenは(知識として)知っていること,schaftは名詞を作る接尾辞で,wissenschaftは「知識」や「学問」を意味し,英語のscienceと同義です.Scienceは明治期に中国の「科挙之学」の略語から「科学」と和訳されました.一方,geistは精神・心・霊などを意味する多義的な語です.「Der wissenschaftlicheGeist」を独語から直訳すれば「学問的精神」,真意は「客観的な事実に基づいた論理的思考」に近いと考えられます.角尾先生と同時代を生きた哲学者・西田幾多郎は,著書『日本文化の問題』において「科学的精神」について次のように述べています.「物の真実に行くと云ふことは,唯因襲的に伝統に従ふとか,主観的感情のままに振舞ふとかと云ふことではない.何処までも物の真実に行くと云ふことには,科学的精神と云ふものも含まれていなければならない.それは己を空(むな)しくして物の真実に従ふことでなければならない.」
 AIが進化する現代の情報社会において,氾濫する情報の真実を見極めることは容易ではありません.ボストン大学の哲学者リー・マッキンタイアは,「科学的態度」とは権威や主観的な思い込みに固執せず,客観的な事実に照らして自らの認識をアップデートし続ける知的で誠実な態度であり,ある情報が科学的に正しいと判断されるには,その論理的プロセス,いわゆる「科学的精神」が重要であることを指摘しています.
 次代を担う若手には,是非「Der wissenschaftliche Geist」をもって臨床神経学に日本語でチャレンジしてほしいです.

(辻野 彰)

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