臨床神経学

短報

MRI上の広範な白質病変と遷延する意識障害にもかかわらず長期予後良好であった低血糖性昏睡の1例

横井 聡1)3), 安井 敬三1), 長谷川 康博1), 笠井 貴敏2), 稲垣 朱実2), 祖父江 元3)

Corresponding author: 名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学〔〒466-8550 愛知県名古屋市昭和区鶴舞町65〕
1)名古屋第二赤十字病院神経内科
2)名古屋第二赤十字病院糖尿病・内分泌内科
3)名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学

症例は28歳女性である.インスリノーマによる低血糖で昏睡となった.入院時の頭部MRI拡散強調画像(DWI)で両側頭頂後頭葉白質にびまん性高信号域をみとめ,血糖補正後も意識障害が遷延した.しかし,インスリノーマを切除し,血糖を管理しながら経過を観察したところ,発症1年後にはほぼ後遺症なく回復し,復職を果たした.一般に,広範な白質病変をともなう低血糖性昏睡は予後不良とされているが,初期治療の反応が不良であっても,長期的にみれば緩徐に改善する予後良好な症例が存在すると考えられる.
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(臨床神経, 53:724−727, 2013)
key words:低血糖性昏睡,インスリノーマ,白質脳症,ステロイド

(受付日:2012年12月12日)