臨床神経学

症例報告

転倒発作と反復する一過性の言語障害を呈したY69H (p.Y89H)変異型遺伝性トランスサイレチン髄膜アミロイドーシスの1例

齋藤 奈つみ1), 黒羽 泰子1), 長谷川 有香1), 他田 真理2), 柿田 明美2), 渡邊 慶3), 橋 哲哉1)*

Corresponding author: 国立病院機構西新潟中央病院脳神経内科〔〒950-2085 新潟市西区真砂1丁目14-1〕
1) 国立病院機構西新潟中央病院脳神経内科
2) 新潟大学脳研究所病理学分野
3) 新潟大学医歯学総合病院整形外科

症例は73歳女性.66歳時より,1〜2日で回復する一過性言語障害,右手指感覚障害の発作を数ヶ月ごとに反復するようになった.71歳,振戦と歩行障害を発症し,転倒を繰り返した.発作時は音韻性錯語,文章の聴理解障害,失書が悪化した.72歳入院時の脳および脊髄造影MRIで髄膜がびまん性に造影効果を示し,脊髄髄膜生検で,くも膜やくも膜下腔の血管壁に抗トランスサイレチン抗体で標識されるアミロイドの沈着を認め,髄膜アミロイドーシスと診断した.また,トランスサイレチン遺伝子にY69H (p.Y89H)変異を認めた.一過性局所神経徴候を繰り返す症例では,トランスサイレチン髄膜アミロイドーシスの鑑別も要する.
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(臨床神経, 63:650−655, 2023)
key words:トランスサイレチンアミロイドーシス,髄膜アミロイドーシス,Y69H 変異,転倒発作,ロゴペニック型進行性失語

(受付日:2023年2月23日)