臨床神経学

症例報告

辺縁系脳炎として突然発症した神経梅毒の1例

明石(長谷川) 愛子1)*, 高橋 義秋2), 森本 みずき2), 横田 恭子3), 森本 展年2)

Corresponding author: 香川県立中央病院臨床研修センター(〒760-8557 香川県高松市朝日町1丁目2-1)
1) 香川県立中央病院臨床研修センター
2) 香川県立中央病院脳神経内科
3) 香川県立中央病院感染症科

症例は52歳男性.突然の異常行動と意識障害で救急搬送された.搬送直後から全身痙攣をきたし,ミダゾラムにて痙攣は停止するも健忘症状が遷延した.髄膜刺激徴候を認め,臨床経過と合わせ辺縁系脳炎と考えた.血清・髄液梅毒反応陽性の結果より脳炎の原因を神経梅毒と判断し,ペニシリンGで治療を開始した.頭部MRIでは両側側頭葉内側に左側優位のT2/FLAIR高信号病変を認め,ヘルペス脳炎の可能性も考慮し,髄液HSV-DNA陰性が判明するまでアシクロビルを併用し,ステロイドパルス療法も行った.経過とともに症状は改善し職場復帰した.辺縁系脳炎で発症する神経梅毒は稀だが治療方針を考える上で極めて重要な疾患である.
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(臨床神経, 63:15−20, 2023)
key words:辺縁系脳炎,神経梅毒,急性脳炎

(受付日:2021年7月11日)