臨床神経学

症例報告

ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後に血小板減少症を伴う血栓症を発症した1例

高附 磨理1)*, 荒木 俊彦1), 菅野 陽1), 安本 篤史2), 森下 英理子3), 塩田 宏嗣1)

Corresponding author: 川口市立医療センター脳神経内科〔〒333-0833 埼玉県川口市西新井宿180〕
1) 川口市立医療センター脳神経内科
2) 北海道大学病院検査・輸血部
3) 金沢大学大学院医薬保健学総合研究科保健学専攻病態検査学

基礎疾患のない48歳男性.ChAdOx1 nCoV-19ワクチン1回目を接種した10日後より頭痛を自覚.血液検査で,血小板数の低下,Dダイマーの上昇を認め,DICも合併していた.頭部単純CTにて左頭頂部に微小出血,造影CTにて左横静脈洞,左S状静脈洞に静脈洞血栓を認めた.その後施行した頭部MRIにて,左頭頂部に静脈性出血性梗塞,くも膜下出血,全身造影CTにて門脈血栓症,腎梗塞の所見を認めた.新型コロナワクチン接種後の血小板減少症を伴う血栓症(thrombosis with thrombocytopenia syndrome,以下TTSと略記)と診断し,手引きに準じて治療を行い,自宅退院となった.本症例は,ChAdOx1 nCoV-19ワクチンに伴うTTSの国内1例目と考えられる.
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(臨床神経, 62:487−491, 2022)
key words:ChAdOx1 nCoV-19,ワクチン,血小板減少症を伴う血栓症,静脈洞血栓症,脳出血

(受付日:2022年1月12日)