臨床神経学

症例報告

食嗜好の変化が出現した小脳梗塞の1例

齋藤 祐太朗1)* , 小栗 卓也1), 櫻井 圭太2), 加藤 秀紀1), 湯浅 浩之1)

Corresponding author: 公立陶生病院脳神経内科〔〒489-8642 愛知県瀬戸市西追分町160番地〕
1) 公立陶生病院脳神経内科
2) 国立長寿医療研究センター放射線診療部

44歳女性.浮動性めまいと嘔吐で受診し,頭部MRIで右後下小脳動脈領域の脳梗塞と診断した.発症後,前頭葉機能低下とともに食嗜好の変化がみられ,もともと薄味の和食や無糖コーヒー,熱い飲料を好んで摂取していたのが,洋食や大量の砂糖入りコーヒー,冷たい飲料を好むようになった.脳血流SPECTで右小脳と両側前頭葉に血流低下を認めたが,発症約6ヶ月後には前頭葉機能と前頭葉血流の回復にともない,食嗜好も以前のとおりに復した.本例より,小脳梗塞においても遠心性経路を介した前頭葉機能低下に関連し,食嗜好も変化しうることが示唆された.
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(臨床神経, 62:781−786, 2022)
key words:小脳梗塞,食嗜好,前頭葉,梁下野,脳血流SPECT

(受付日:2022年3月2日)