臨床神経学

症例報告

長大な脊髄病変と持続するガドリニウム造影効果を呈し,脊髄生検で診断し得た脊髄髄内原発悪性リンパ腫の1例

岡野 篤志1), 金井 雅裕1), 喜多 貴信1), 中井 良幸1), 岡田 弘明1), 山口 啓二1)*

Corresponding author: 一宮西病院脳神経内科〔〒494-0001 愛知県一宮市開明字平1番地〕
1) 一宮西病院脳神経内科

症例は82歳男性で,亜急性の経過で両下肢の不全麻痺および深部覚障害,膀胱直腸障害を呈した.脊髄MRIで延髄から下位胸髄にかけて灰白質優位の長大な病変を認めたため,脊髄炎としてステロイドパルス療法を実施したが奏効せずに四肢麻痺となった.治療抵抗性の脊髄症として脊髄生検を行い,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と病理診断された.全身検索では他に悪性リンパ腫を示唆する所見を認めず脊髄髄内原発悪性リンパ腫と診断した.本症の確定診断には脊髄生検が必要であるが,治療反応性が不良かつ進行性の経過の場合は髄液IL-10の持続的な上昇や造影効果の長期持続があれば髄内悪性リンパ腫を考慮する必要がある.
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(臨床神経, 61:856−861, 2021)
key words:脊髄症,脊髄髄内原発悪性リンパ腫,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫,インターロイキン10,脊髄生検

(受付日:2021年6月12日)