臨床神経学

症例報告

長時間の肩関節屈曲外旋姿位での発声訓練で両側性腕神経叢障害を発症した遺伝性圧脆弱性ニューロパチーの18歳男性例

畠 星羅1)2), 清水 文崇1), 大石 真莉子1), 木村 和美2), 神田 隆1)*

Corresponding author:山口大学大学院医学系研究科臨床神経学〔〒755-8505 山口県宇部市南小串1-1-1〕
1) 山口大学大学院医学系研究科臨床神経学
2) 日本医科大学大学院医学研究科神経内科学分野

家族歴のない18歳男性.自衛隊での発声訓練で,左肘を曲げ左手を腰にあて両胸を張った姿勢を維持した後,左上肢の筋力低下と感覚障害が出現した.その1か月後に右側で同一の姿勢を維持した後,右上肢の筋力低下と感覚障害が出現した.神経学的には左優位の上肢の広範な筋力低下と,両前腕尺側の感覚障害を認めた.神経伝導検査で両側正中神経と右尺骨神経に脱髄所見があり,臨床所見と針筋電図を併せて腕神経叢障害と診断した.長時間の肩関節外転伸展姿位により肋鎖間隙や小胸筋下間隙が狭小化し,下神経幹を中心とした腕神経叢の絞扼が生じたと考えた.末梢神経脆弱性の存在を疑い,遺伝子検査により遺伝性圧脆弱性ニューロパチーと診断した.
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(臨床神経, 61:676−680, 2021)
key words:腕神経叢障害,胸郭出口症候群,遺伝性圧脆弱性ニューロパチー,PMP22遺伝子,末梢神経障害

(受付日:2021年3月29日)