臨床神経学

症例報告

短期間の食思不振を契機に重篤なケトアシドーシスを発症した脊髄性筋萎縮症の1例

乾 涼磨1), 藤原 悟1)*, 川本 未知1), 幸原 伸夫1)

Corresponding author: 神戸市立医療センター中央市民病院〔〒650-0047 兵庫県神戸市中央区港島南町2-1-1〕
1)神戸市立医療センター中央市民病院脳神経内科

症例は脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy; SMA)II型の29歳女性.下気道炎で入院後,感染は速やかに改善したが食事量は減少した.腹痛,嘔吐を契機に入院7日目に絶食状態に至ると約12時間後に意識障害を伴うショックとなりICUに入室した.代謝性アシドーシスと尿ケトン陽性からケトアシドーシスと診断,糖補充,インスリン持続静注により速やかに改善.慢性低栄養によるグリコーゲン不足に加え,骨格筋萎縮による糖新生不良やケトン体消費不良が重症ケトアシドーシスを引き起こしたと考えた.SMA患者で絶食後に意識障害を呈する場合,本病態を想起し速やかに治療を開始する必要がある.
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(臨床神経, 60:268−271, 2020)
key words:脊髄性筋萎縮症,飢餓性ケトアシドーシス,栄養

(受付日:2019年10月22日)