臨床神経学

症例報告

持続する嘔気・繰り返す失神で発症した視神経脊髄炎関連疾患(neuromyelitis optica spectrum disorder)の1例

遠藤 芳徳1)2), 林 浩嗣1)2)3)*, 井川 正道2), 山村 修2), 大倉 清孝4), 濱野 忠則2)5)

Corresponding author: 福井医療大学保健医療学部リハビリテーション学科〔〒910-3113 福井県福井市江上町55-13-1〕
1)福井県済生会病院神経内科
2)福井大学医学部附属病院脳神経内科
3)福井医療大学保健医療学部リハビリテーション学科
4)福井県済生会病院循環器内科
5)福井大学医学部認知症医学推進講座

症例は22歳の女性である.持続する嘔気を繰り返したため入院した.入院後,失神発作を繰り返し,発作性洞停止を認めた.体外ペーシング挿入後,失神発作は消失したが,回転性めまい,眼振,複視,四肢異常感覚が新たに出現した.MRIでは延髄背側に異常信号をみとめた.血清中抗アクアポリン4抗体が陽性であり,視神経脊髄炎関連疾患(neuromyelitis optica spectrum disorder; NMOSD)と診断確定した.ステロイドパルス療法を2クール施行したところ,症状は改善した.以上より今回の洞停止はNMOSDの最後野症候群の一つの症状と考えられた.発作性洞停止の原因としてNMOSDの可能性も考慮すべきである.
Full Text of this Article in Japanese PDF (805K)

(臨床神経, 60:142−145, 2020)
key words:NMO spectrum disorder,持続する嘔気,失神,洞停止,最後野症候群

(受付日:2019年7月25日)