臨床神経学

症例報告

片側の多発脳神経障害と多発脳梗塞を呈し外耳道からの炎症波及を疑った非典型頭蓋底骨髄炎の1例

橋本 侑1)*, 立石 貴久1)

Corresponding author: 独立行政法人地域医療機能推進機構九州病院神経内科〔〒806-8501 福岡県北九州市八幡西区岸の浦1-8-1〕
1)独立行政法人地域医療機能推進機構九州病院神経内科

症例は76歳男性.2017年4月から嚥下障害と微熱の精査目的で,当院外科へ入院した.左声帯麻痺と筋力低下を認め,5月に当科へ紹介された.神経診察で左顔面神経麻痺や嗄声,舌左偏倚,左難聴,軽度四肢筋力低下を認めた.CTで斜台の脱灰,MRIで斜台から上位頸椎までの軟部組織と硬膜の増強を認め,頭蓋底骨髄炎の所見であった.また多発性左脳梗塞,左内頸動脈狭窄を認めた.典型的耳症状を認めなかったが,左外耳道に大量の耳垢と炎症所見を認め,外耳道からの炎症波及を疑った.抗菌薬への反応に乏しく,4ヶ月の経過で死亡した.脳神経障害の存在は頭蓋底骨髄炎の予後予測因子であり,疑った際には早期の治療介入が必要である.
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(臨床神経, 59:205−210, 2019)
key words:頭蓋底骨髄炎,悪性外耳道炎,多発脳神経障害,Garcin症候群,多発脳梗塞

(受付日:2018年12月11日)