臨床神経学

症例報告

非細菌性血栓性心内膜炎が原因の脳塞栓症に対し,血栓回収療法を試みた1剖検例

安田 謙1)2), 綾木 孝2)*, 川端 康弘3), 村瀬 永子1), 大谷 良1), 中村 道三1)

Corresponding author: 京都大学大学院医学研究科臨床神経学〔〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54〕
1)国立病院機構京都医療センター脳神経内科
2)京都大学大学院医学研究科臨床神経学
3)国立病院機構京都医療センター脳神経外科

症例は,73歳女性.十二指腸乳頭部癌の末期で外来通院中,突然の右片麻痺で救急搬送された.頭部MRIで,左中大脳動脈領域に拡散低下を認め,MRAで左内頸動脈はサイフォン部までしか描出されなかった.血小板数が低値で,血栓溶解療法の禁忌に該当したため,血栓回収療法を行った.血栓吸引を試みるも,有効再開通を得られなかった.その後,多臓器不全に至り死亡した.病理では,僧帽弁に血小板主体の白色血栓が付着し,非細菌性血栓性心内膜炎からの脳塞栓症と診断した.非細菌性血栓性心内膜炎による脳梗塞では,白色血栓であることが多く,硬いことが予想され,この点を考慮しデバイスを選択する必要がある.
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(臨床神経, 59:195−199, 2019)
key words:非細菌性血栓性心内膜炎,血栓回収療法,脳梗塞,白色血栓

(受付日:2018年11月22日)