臨床神経学

症例報告

視覚性注意障害(Holmes and Horrax)およびataxie optique(Garcin)を示した進行性核上性麻痺(Richardson 症候群)の1例

森島 亮1)*, 板東 充秋1), 角南 陽子1), 磯ア 英治1)

Corresponding author: 東京都立神経病院脳神経内科〔〒183-0042 東京都府中市武蔵台2-6-1〕
1)東京都立神経病院脳神経内科

症例は72歳男性,右利き.2年前から小歩・物忘れ・易転倒性で発症し,神経学的・神経放射線学的には進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy; PSP)が疑われ,視野の異常はなかった.神経心理学的には,全般性の知能低下と注意障害を背景として,視空間定位障害と視覚性注意障害があり,これに伴う空間性失書と構成障害他の検査成績の低下を認めた.本例の症候は典型的なPSPにHolmes and Horraxの視覚性注意の障害およびGarcinのataxie optiqueが合併していると考えられるが,PSPにおいて本例の如く視空間認知の障害が前景に立つ例の報告は筆者らの知る限りなく,文献的考察を加え報告する.
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(臨床神経, 59:730−735, 2019)
key words:進行性核上性麻痺,posterior cortical atrophy,Bálint症候群,視覚性注意障害,視覚失調

(受付日:2019年1月15日)