臨床神経学

症例報告

難治左内側側頭葉てんかんに対する左側頭葉切除術後に瞳孔異常と発汗障害の側方性が逆転したRoss症候群の1例:脳内ネットワークを介した影響

邉見 名見子1), 音成 秀一郎1)2), 下竹 昭寛3), 大石 明生4), 滝 和郎5), 池田 昭夫3)*, 橋 良輔1)

Corresponding author: 京都大学大学院医学研究科てんかん・運動異常生理学〔〒606-8507 京都市左京区聖護院河原町54〕
1)京都大学大学院医学研究科臨床神経学
2)広島大学病院脳神経内科
3)京都大学大学院医学研究科てんかん・運動異常生理学
4)京都大学大学院医学研究科眼科学
5)医療法人康生会武田病院脳神経外科

症例は難治の左内側側頭葉てんかんに対する左側頭葉切除術後にRoss症候群の発汗障害の分布の側方性が逆転した60歳女性である.10歳代より発汗障害が全身性にあったが,左側頭葉由来の複雑部分発作が難治に経過した20歳代には,この発汗低下は左半身にのみ見られ右半身の(代償性)発汗亢進を伴った.35歳時に左側頭葉焦点切除術後,発汗低下と代償性亢進の側方性が逆転し,緊張性瞳孔と腱反射低下・消失が顕在化し緩徐進行した.中枢神経病巣としてのてんかん焦点が,末梢神経に病態の首座を持つRoss症候群の表現型を変容させた可能性が長期の経過経過で示された.
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(臨床神経, 59:646−651, 2019)
key words:自律神経,抗てんかん薬,緊張性瞳孔,深部腱反射,複雑部分発作

(受付日:2019年5月8日)