臨床神経学

症例報告

グリシン受容体α1遺伝子に点変異を認め,クロナゼパムが著効したhereditary hyperekplexiaの1家系

守吉 秀行1)2)*, 畑 由紀子3), 稲垣 良輔1), 鈴木 淳一郎1), 西田 卓1), 西田 尚樹3), 伊藤 泰広1)

Corresponding author: 名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学〔〒466-8550 愛知県名古屋市昭和区鶴舞町65番地〕
1)トヨタ記念病院神経内科
2)現:名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学
3)富山大学大学院医学薬学研究部法医学講座

発端者は31歳の女性である.頻回な転倒と頭部外傷を主訴に来院した.健常者では問題とならない軽度の刺激で驚愕反射が誘発され,その直後に数秒の全身の筋収縮が出現する.意識は保たれつつ防御ができないまま棒のように転倒し,上肢や頭部の打撲を繰り返した.父,二人の姉に類症を認め遺伝子検査でグリシン受容体(glycine receptor α1; GLRA1)遺伝子変異を確認しhereditary hyperekplexiaと診断した.クロナゼパム1mgの内服で転倒頻度は著減した.本疾患の患者は頻回な転倒に強い不安を抱いて日常生活を送っており,実際重度な外傷を来すこともある.有効な治療法があり適切な診断が重要である.
Movie legends
Exaggerated startle reflex. Exaggerated startle reflex and generalized muscle contraction are induced by acoustic stimuli.
Movie
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(臨床神経, 58:435−439, 2018)
key words:hyperekplexia,びっくり病,グリシン受容体,GLRA1,転倒

(受付日:2017年12月26日)