臨床神経学

短報

MRIでラトケ嚢胞からの経時的変化が確認できたトルコ鞍部の膿瘍をともなう黄色肉芽腫の1例

津田 曜1)*, 小栗 卓也1), 櫻井 圭太2), 渡邉 督3), 前田 永子4), 湯浅 浩之1)

Corresponding author: 公立陶生病院神経内科〔〒489-8642 愛知県瀬戸市西追分町160番地〕
1)公立陶生病院神経内科
2)東京都健康長寿医療センター放射線診断科
3)名古屋第二赤十字病院脳神経外科
4)名古屋第二赤十字病院病理診断科

80歳女性.多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis; GPA)の経過中に頭痛が出現.頭部MRI上,トルコ鞍部に辺縁に造影効果をともなう占拠性病変を認めた.当初GPAの下垂体病変を疑ったが,以前のMRIでラトケ嚢胞を認めたことから,嚢胞内に生じた膿瘍も考えられた.経蝶形骨洞手術により病変は膿瘍をともなう黄色肉芽腫と診断され,ラトケ嚢胞に膿瘍を形成し黄色肉芽腫が生じたと判断.術後,頭痛は軽快した.ラトケ嚢胞と黄色肉芽腫の併存は以前から報告されているが,経時的変化を確認できた報告は本例がはじめてである.トルコ鞍部占拠性病変の鑑別診断上,以前からラトケ嚢胞が存在する場合,膿瘍をともなう黄色肉芽腫も考慮すべきと考えられた.
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(臨床神経, 58:411−413, 2018)
key words:黄色肉芽腫,ラトケ嚢胞,膿瘍,核磁気共鳴画像(MRI)

(受付日:2018年2月28日)