臨床神経学

短報

網膜電図,末梢神経伝導検査,体性感覚誘発電位異常を伴った孤発性神経核内封入体病の1例

廣瀬 文吾1), 久原 真1)*, 上杉 春雄2), 曽根 淳3), 祖父江 元3), 下濱 俊1)

Corresponding author: 札幌医科大学神経内科〔〒060-8543 札幌市中央区南1条西16丁目〕
1)札幌医科大学神経内科
2)札幌山の上病院神経内科
3)名古屋大学大学院神経内科

症例は70歳の男性,10年前より原因不明の尿閉,4年前より認知機能低下,1年前より視力障害が進行した.頭部MRI拡散強調画像で皮質下皮髄境界に弧状の高信号を,皮膚生検で神経核内封入体を認めたため神経核内封入体病(neuronal intranuclear inclusion disease; NIID)と診断した.神経伝導検査では軽度の伝導速度低下を,下肢体性感覚誘発電位では早期皮質潜時の延長が見られた.視力低下の原因精査で行った網膜電図では錐体応答優位に振幅低下を認めていた.これらの所見は他に明らかな原因がなくNIIDに伴う異常と考えられた.視力低下は臨床徴候として知られておらず詳細な文献的考察は少ない.症例の集積が必要であると考えられる.
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(臨床神経, 58:407−410, 2018)
key words:神経核内封入体病,末梢神経伝導検査,体性感覚誘発電位,網膜電図,錐体細胞

(受付日:2018年2月9日)