臨床神経学

総説

脳腱黄色腫症の病態

小山 信吾1)*, 加藤 丈夫1)

Corresponding author: 山形大学医学部第3内科〔〒990-9585 山形市飯田西2-2-2〕
1)山形大学医学部第3内科

脳腱黄色腫症(cerebrotendinous xanthomatosis; CTX)は常染色体劣性遺伝形式を示す先天性代謝性疾患である.CYP27A1遺伝子異常によってミトコンドリア27-水酸化酵素の機能不全をきたし,コレスタノールが組織に蓄積する.CYP27A1遺伝子の変異は,ミスセンス変異,ナンセンス変異,欠失変異,挿入変異,スプライス変異など多岐にわたりこれまで50種類以上の変異が報告されている.CTXの臨床症状は,新生児期黄疸・胆汁うっ滞,難治性下痢,若年性白内障,腱黄色腫,骨粗鬆症,心血管病変などの全身症状と進行性の精神・神経症状からなるが,症状の組み合わせは症例毎に差異が大きい.精神・神経症状として,精神発達遅滞・認知症,精神症状,錐体路徴候,小脳失調,進行性の脊髄症,末梢神経障害,錐体外路徴候,てんかんなどが挙げられる.病初期からのケノデオキシコール酸の補充療法が症状の改善・症状発現の予防となることが報告されている.しかし,重度の精神・神経症状をきたした症例では治療効果は限定的であり,治療によっても症状の進行が認められるため,早期診断が極めて重要になる.
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(臨床神経, 56:821−826, 2016)
key words:脳腱黄色腫症,コレスタノール,ケノデオキシコール酸,CYP27A1

(受付日:2016年9月12日)