臨床神経学

症例報告

長期の経過で脳・眼病変の増悪寛解を呈した中枢神経原発悪性リンパ腫の55歳女性例

佐々木 拓也1)*, 中山 貴博1), 北村 美月1), 角田 幸雄2), 今福 一郎1)

Corresponding author: 横浜労災病院神経内科〔〒222-0036 神奈川県横浜市港北区小机町3211番〕
1)横浜労災病院神経内科
2)横浜労災病院病理診断科

症例は55歳女性である.7年前に左顔面の異常感覚と右視床病変を生じたが自然消失した.1年前より右上下肢運動障害と両側基底核病変が出現・増悪した.続いて左後頭葉病変が新出し視神経炎も併発した.経過中,ステロイド反応性のぶどう膜炎を2度発症した.長期にわたる増悪寛解型の経過より当初は多発性硬化症などの炎症性疾患を考えたが,ステロイド治療の効果が不十分だったため脳生検を施行し,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の診断をえた.中枢神経原発悪性リンパ腫が一時的に自然消失することは知られているが,本例ほどの長期経過をとることはまれであり炎症性疾患との鑑別上重要な症例であると考えられ,報告する.
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(臨床神経, 55:567−572, 2015)
key words:中枢神経原発悪性リンパ腫,眼内リンパ腫,視神経炎,ぶどう膜炎,脳生検

(受付日:2015年1月10日)