臨床神経学

症例報告

緊張性瞳孔で偶然発見されたRoss症候群の1例

岡田 匡充1)*, 稲富 雄一郎1), 加藤 勇樹2), 軸丸 美香2), 大林 光念3), 米原 敏郎1), 安東 由喜雄2)

Corresponding author: 済生会熊本病院脳卒中センター神経内科〔〒861-4193 熊本市南区近見5丁目3番1号〕
1)済生会熊本病院神経内科
2)熊本大学大学院生命科学研究部神経内科学分野
3)熊本大学大学院生命科学研究部構造機能解析学分野

66歳,女性.めまいを主訴に受診した際に,緊張性瞳孔と四肢腱反射消失をみとめた.また10歳代より,熱不耐症や左半身の発汗低下を自覚していた.ピロカルピン点眼試験では両側縮瞳,温熱発汗試験では顔面と左胸部に発汗低下をみとめ,Ross症候群と診断した.アセチルコリン皮内注射では鎖骨下と臍周囲の左側で発汗が低下していた.胃電図では平均周波数の低下とbradygastriaの頻度上昇,皮膚血流検査では左上肢で安静時皮膚血流増加と深呼吸刺激に対する血管反応性低下をみとめた.左上腕皮膚生検では毛包脂腺や汗腺は萎縮していた.免疫グロブリン静注療法は無効であった.本疾患では多様な自律神経障害が併存する可能性がある.
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(臨床神経, 55:160−164, 2015)
key words:Ross症候群,分節性無汗症,Adie症候群,腱反射消失,自律神経障害

(受付日:2014年6月6日)