臨床神経学

症例報告

記憶障害のみを呈しMR検査で脳血管障害が示唆された2例

賣豆紀 智美1)*, 藤本 茂1), 松木 孝之1), 鈴木 聡1), 石束 隆男1), 北園 孝成2)

Corresponding author: 製鉄記念八幡病院脳血管内科〔〒805-8508 北九州市八幡東区春の町1-1-1〕
1)製鉄記念八幡病院脳卒中センター
2)九州大学大学院病態機能内科学

症例1は77歳男性.一過性記憶障害を主訴に来院した.MRI拡散強調画像で両側海馬に点状の異常信号をみとめた.経食道心エコーで大動脈弓部に6.80 mmの複合粥腫病変をみとめ,大動脈原性脳塞栓症と診断した.症例2は66歳女性.一過性記憶障害を主訴に来院した.MRIで急性期脳梗塞の所見はなかったが,MRAで右後大脳動脈分枝閉塞とその後の再開通を確認し,一過性脳虚血発作と診断した.経食道心エコーで大動脈弓部に分枝におよぶ3.86 mmの粥腫をみとめた.急性発症の記憶障害の原因として虚血性脳血管障害を鑑別し,その原因として大動脈原性脳塞栓症を考慮することが重要である.
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(臨床神経, 55:145−150, 2015)
key words:記憶障害,拡散強調画像,脳梗塞,海馬

(受付日:2014年2月8日)