臨床神経学

短報

抗結核薬に対する多剤過敏症を合併した結核性髄膜炎の1例

荒井 元美1)*

Corresponding author: 聖隷三方原病院神経内科〔〒433-8558 静岡県浜松市北区三方原町3453〕
1)聖隷三方原病院神経内科

症例は64歳の男性である.微熱と頭痛が続いたが神経系の障害はみられなかった.髄液の単核球増多,ブドウ糖低下,アデノシンデアミナーゼ高値から結核性髄膜炎をうたがってイソニアジド,リファンピシン,ピラジナミド,エタンブトールを使用し症状は軽減した.しかし治療開始20日目から弛張熱が続いた.薬剤熱をうたがいすべての抗結核薬を中止し,3日目に解熱した.薬剤誘発性リンパ球刺激試験でエタンブトール以外の3種類の抗結核薬が陽性であった.減感作療法をおこなわずにレボフロキサシンとエチオナミドに変更し,髄膜炎は改善した.結核性髄膜炎の治療中に化学構造に関連がない複数の薬剤に対する多剤過敏症を発症することがあり,注意を要する.
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(臨床神経, 55:123−125, 2015)
key words:結核性髄膜炎,多剤過敏症,薬剤誘発性リンパ球刺激試験,脱感作療法

(受付日:2014年6月4日)