臨床神経学

短報

MRI拡散強調画像で広範な虚血性変化をみとめたにもかかわらず機械的血栓除去術により片麻痺が著明に改善した心原性脳塞栓症の1例

高下 純平1)*, 鳥居 孝子1), 中垣 英明1), 松本 省二1), 川尻 真和1), 山田 猛1)

Corresponding author: 済生会福岡総合病院神経内科〔〒810-0001 福岡市中央区天神1-3-46〕
1)済生会福岡総合病院神経内科

症例は63歳の男性である.発語障害に遅れて右片麻痺をきたした.入院時,右片麻痺,全失語をみとめ,NIHSSスコア34点.心房細動をみとめた.MRI拡散強調画像で左中大脳動脈(MCA)領域に広範な虚血性変化をみとめ,心原性脳塞栓症と診断.MRAで左内頸動脈(ICA)は閉塞していたが,左前大脳動脈(ACA)は描出された.Merciリトリーバーによる血栓除去をおこない,ICA〜MCAが再開通し,第2病日に右片麻痺はほぼ消失した.治療前の右総頸動脈造影で左ACAから外側にのびる動脈をみとめ,左中心前回への側副血行と考えた.ACAからの側副血行が保たれているばあい,ICA閉塞でも血行再建により片麻痺が改善する可能性がある.
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(臨床神経, 53:646−649, 2013)
key words:MRI DWI,機械的血栓除去術,内頸動脈閉塞,心原性脳塞栓症,側副血行

(受付日:2012年12月25日)