臨床神経学

短報

小児期発症がうたがわれ,長期間進行停止後に増悪したと考えられたAlexander病の1例

永石 彰子1)*, 中根 俊成1), 福留 隆泰1), 松尾 秀徳1), 吉田 誠克2)

Corresponding author: 独立行政法人国立病院機構長崎川棚医療センター〔〒859-3615 長崎県東彼杵郡川棚町下組郷2005-1〕
1)独立行政法人国立病院機構長崎川棚医療センター神経内科
2)京都府立医科大学神経内科

症例は40歳の女性である.1歳で単発の痙攣の既往があり,以降活気が乏しくなった.小学生時から成績不良であった.最終学歴は短期大学卒業で,卒業後に就職したが転居を機に短期間で離職した.38歳時に発語・感情が乏しくなり,その後歩行が不安定になった.40歳時,転倒を契機に他院に入院し,当院に紹介された.頭部MRIで前頭側頭葉白質を主とした著明な脳萎縮を,頸髄MRIで頸髄全般に軽度の萎縮をみとめた.GFAP遺伝子の検索でR79H変異があり,MRI所見とあわせ若年発症Alexander病が長期症状固定後に増悪したものとうたがわれた.若年型Alexander病の自然歴を考える上で貴重な症例と考えられた.
Full Text of this Article in Japanese PDF (2324K)

(臨床神経, 53:474−477, 2013)
key words:若年発症Alexander病,R79H変異,進行停止,増悪

(受付日:2012年8月9日)