臨床神経学

症例報告

馬尾生検が診断に有用であった髄膜播種性の悪性リンパ腫の1例

中嶋 秀樹1)*, 本村 政勝1), 山口 将2), 加藤 丈晴3), 安倍 邦子4)

Corresponding author: 長崎大学病院第一内科神経内科〔〒852-8501 長崎県長崎市坂本1丁目7番1号〕
1)長崎大学病院第一内科神経内科
2)長崎大学病院脳神経外科
3)長崎大学病院血液内科
4)長崎大学病院病理部

症例は49歳男性である.歩行障害を主訴に来院された.全身倦怠感,両下腿の異常感覚に加え,両下肢筋力低下が亜急性に進行し,歩行不能になった.腰椎MRIで馬尾全体が著明に腫大し,びまん性に造影効果をともなっていた.原因を精査していたところ急激に膀胱直腸障害,意識障害および複視が出現した.早急に馬尾生検を施行し,悪性リンパ腫の診断にいたった.化学療法と放射線療法を組み合わせ,症状は著明に改善した.治療後10ヵ月の時点で,下腿の不全麻痺,振動覚低下および異常感覚が残存するが,再発はなくその他の機能は良好でありすでに社会復帰している.髄液検査,馬尾生検が迅速な診断と治療につながり有用であった.
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(臨床神経, 53:803−808, 2013)
key words:悪性リンパ腫,DLBCL,馬尾生検,髄液sIL-2R

(受付日:2013年2月9日)