臨床神経学

短報

両側舌萎縮で発症した神経リンパ腫症の1例

須貝 章弘1), 今野 卓哉1), 矢野 敏雄2), 梅田 麻衣子1), 小宅 睦郎1), 藤田 信也1)*

Corresponding author: 長岡赤十字病院神経内科〔〒940―2085 新潟県長岡市千秋2丁目297番地1〕
1)長岡赤十字病院神経内科
2)同 血液内科

症例は2カ月前から構音障害が進行した62歳女性である.急速に進行する両側の舌萎縮と線維束性収縮をみとめ,脳MRIで左舌下神経管内に病変をみとめた.ガリウムシンチグラフィーで左大腿部に異常集積をみとめ,同部位の生検により,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の診断にいたった.化学療法により舌萎縮は改善し,左大腿部の病変も消失した.その後,左動眼神経麻痺と右上肢筋力低下が生じ,続いて右下肢筋力低下もみとめ,神経リンパ腫症を示唆するMRI所見を各々にみとめた.神経リンパ腫症の診断には難渋することが多く,とくに本症例は,筋萎縮性側索硬化症との鑑別を要する両側舌萎縮で発症した点が,日常臨床的に重要と思われ,報告した.
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(臨床神経, 52:589−591, 2012)
key words:舌下神経麻痺,悪性リンパ腫,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫,神経リンパ腫症

(受付日:2012年1月13日)