臨床神経学

症例報告

脳症を呈した猫ひっかき病の34歳女性例

山下 裕之1)*, 宇羽野 惠2), 上坂 義和3), 國本 雅也4)

Corresponding author: 国立国際医療研究センター膠原病科〔〒162―8655 東京都新宿区戸山1―21―1〕
1)国立国際医療研究センター膠原病科
2)東京女子医科大学神経内科
3)虎の門病院神経内科
4)済生会神奈川県病院神経内科

脳症を呈した猫ひっかき病(CSD)の一例を経験した.症例は34歳女性,約1カ月前より微熱および鼠径部リンパ節腫脹を自覚していた.発熱および嘔気・嘔吐をともなう頭痛出現後,意識障害が出現し,受診した.髄液検査で大きな異常なく,頭部MRI正常であったが,骨盤造影CTにて壊死性リンパ節炎の所見をみとめ,外科的リンパ節生検にて肉芽腫様変化をみとめた.猫を飼っているという生活歴を考慮し,生検組織をもちいてCSDの病原体であるBartonella HenselaeのPCR検査施行し,陽性であることが判明しCSD脳症と診断した.本邦ではCSD脳症の報告が非常に少なく,見逃されている可能性があるため注意が必要である.
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(臨床神経, 52:576−580, 2012)
key words:猫ひっかき病,脳症,壊死性リンパ節炎,Bartonella Henselae,PCR

(受付日:2012年2月24日)