臨床神経学

症例報告

神経因性膀胱を合併した延髄外側症候群の1例

徳重 真一1), 前川 理沙1), 能勢 頼人2), 椎尾 康1)*

Corresponding author: 東京逓信病院神経内科〔〒102―8798 東京都千代田区富士見2―14―23〕
1)東京逓信病院神経内科
2)同 泌尿器科

症例は45歳男性である.後頭部痛で発症,歩行のふらつき・右半身の発汗低下をきたし第6病日に来院した.頭部MRIで右延髄背外側に急性期梗塞をみとめ入院.尿閉のため膀胱カテーテルを留置した.第8病日のシストメトリーでは膀胱収縮能および尿意は正常であったが,膀胱カテーテルを抜去したところ自排尿は困難であった.原因として,排尿筋外括約筋協調不全(DSD)を考えた.第19病日には排尿は可能となっていた.延髄外側梗塞にともなう排尿障害の報告はしらべえたかぎりでは過去に5例のみと少なく,全例で膀胱収縮能の異常を呈した.膀胱収縮能が正常で排尿障害をきたした延髄外側症候群の例は本稿が初の報告となる.
Full Text of this Article in Japanese PDF (442K)

(臨床神経, 52:79−83, 2012)
key words:神経因性膀胱,排尿筋外括約筋協調不全,延髄外側症候群,シストメトリー

(受付日:2011年6月2日)