臨床神経学

短報

たこつぼ型心筋障害を合併した小脳出血の1例

城本 高志, 芝ア 謙作, 木村 和美, 坂井 健一郎

Corresponding author: 川崎医科大学脳卒中医学〔〒701―0192 岡山県倉敷市松島577〕
川崎医科大学脳卒中医学

症例は94歳女性で,軽度意識障害と右上下肢の協調運動障害で発症した.頭部CTで右小脳半球に15ccの脳内出血をみとめた.入院時の採血で,血漿脳性利尿ペプチド(Brain natriuretic peptide:BNP)が1,064.6pg/mlと異常高値を示し,12誘導心電図でV3〜V5に陰性T波をみとめた.入院時の経胸壁心臓超音波で,左室心尖部の収縮低下と心基部の過収縮がみられた.BNPは経時的に低下し,第14病日には左室壁運動障害は改善した.経過および特徴的な経胸壁心臓超音波所見より,たこつぼ型心筋障害と診断した.脳出血においてたこつぼ型心筋症を合併する事はまれである.今日たこつぼ型心筋障害の診断にBNPが有用であった小脳出血の1例を報告する.
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(臨床神経, 52:778−781, 2012)
key words:たこつぼ型心筋障害,小脳出血,脳性利尿ペプチド

(受付日:2012年2月28日)