臨床神経学

短報

眼窩先端症候群を呈した非浸潤型副鼻腔アスペルギルス感染症の1例

田中 章浩, 吉田 誠克, 諫山 玲名, 藤原 康弘, 笠井 高士, 中川 正法

Corresponding author: 京都府立医科大学神経内科学〔〒602―0841 京都府京都市上京区河原町通広小路上る梶井町465〕
京都府立医科大学神経内科学

症例は78歳の男性である.左前頭部痛,鼻痛,左眼瞼下垂,左視力低下,左眼球運動障害のため当科に入院した.頭部MRIにて左眼窩先端部と左中頭蓋窩硬膜に異常造影効果をみとめた.左蝶形骨洞開放術にてアスペルギルス様糸状菌をみとめ,髄液アスペルギルス抗原陽性より,副鼻腔アスペルギルス症による眼窩先端症候群と診断した.早期の副鼻腔ドレナージと抗真菌薬投与により感染症の沈静化がはかられた.本例の副鼻腔アスペルギルス症は,副鼻腔と眼窩の隔壁の破壊をみとめない“非浸潤型”であったが,眼窩先端症候群や肥厚性硬膜炎などの頭蓋内病変を呈していた.本例では髄液アスペルギルス抗原陽性が診断の参考となり,早期の抗真菌薬の投与が有効と考えられた.
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(臨床神経, 51:219−222, 2011)
key words:眼窩先端症候群,アスペルギルス感染症,副鼻腔真菌症,肥厚性硬膜炎,髄液アスペルギルス抗原

(受付日:2010年10月25日)