臨床神経学

症例報告

早期加療が奏功したアスペルギルス・溶連菌複合感染性の多発性脳静脈洞血栓症をともなう髄膜炎の1例

篠原 未帆1)2), 長尾 雅裕1)*, 松原 四郎1)

Corresponding author: 東京都立神経病院脳神経内科〔〒183-0042 東京都府中市武蔵台2-6-1〕
1)東京都立神経病院脳神経内科
2)現 日本赤十字社和歌山医療センター神経内科

症例は62歳女性である.11日前から頭痛・倦怠感,2日前から右眼痛,1日前から発熱と傾眠が出現し受診した.項部硬直,右眼球突出,両眼瞼下垂,右外転麻痺をみとめ髄液検査で化膿性髄膜炎を呈し頭部MRIで多発性脳静脈洞血栓症と蝶形骨洞炎をみとめた.抗菌薬は効果不十分であったが抗真菌薬・抗凝固薬の追加投与にて臨床症状が改善した.後に血清アスペルギルス抗原陽性と血液培養で溶連菌陽性が判明した.蝶形骨洞炎は隣接する海綿静脈洞へ進展し脳静脈洞血栓症や髄膜炎をおこしえる.本例では蝶形骨洞炎に起因すると考えられたアスペルギルス・溶連菌複合感染性の多発性脳静脈洞血栓症・髄膜炎に対し抗真菌薬による早期推定治療を加え奏功した.
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(臨床神経, 50:656−660, 2010)
key words:アスペルギルス感染症,脳静脈洞血栓症,髄膜炎,蝶形骨洞炎,アムホテリシンBリポソーム製剤

(受付日:2010年3月18日)