臨床神経学

症例報告

塩酸ドネペジル投与後に頸部ジストニアを呈したレビー小体型認知症の1例

長谷川 典子1), 嶋田 兼一1)*, 山本 泰司2), 前田 潔2)

Corresponding author:兵庫県立姫路循環器病センター〔〒670-0981 兵庫県姫路市西庄甲520〕
1)兵庫県立姫路循環器病センター
2)神戸大学大学院医学研究科精神医学分野

長期に塩酸ドネペジル5 mgを投与されていて頸部前屈が出現し,同剤中止後3週間で改善し,5カ月後再投与したところ短期で頸部左方側屈を呈したレビー小体型認知症(DLB)の78歳女性例を報告する.頸部MRI上,頸髄圧迫や傍脊柱筋の萎縮・変性をみとめず,末梢神経伝導検査,疲労試験,各種血液・髄液所見には異常なく,表面筋電図において持続性収縮がみとめられたため,これらの異常姿勢は頸部ジストニアと診断した.ふたたび塩酸ドネペジルを中止すると,3週間で症状は改善した.DLBにおいて,塩酸ドネペジルは,頸部ジストニアの出現に関与する可能性が示唆された.
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(臨床神経, 50:147−150, 2010)
key words:塩酸ドネペジル, 頸部ジストニア, レビー小体型認知症, 頸部前屈, 頸部側屈

(受付日:2009年6月23日)