臨床神経学

楢林賞

新しい抗パーキンソン病薬ゾニサミドの発見

村田 美穂

Corresponding author:国立精神・神経センター病院神経内科〔〒187-8511 東京都小平市小川東町4-1-1〕
国立精神・神経センター病院神経内科

偶然の臨床経験をきっかけに抗てんかん薬ゾニサミドの抗パーキンソン効果を発見した.ゾニサミドは抗てんかん薬としての常用量よりもきわめて少ない,25 mg 1日1回投与で進行期パーキンソン病患者の運動症状を著明に改善し,長期的にも効果を維持することが可能であり,2009年1月ついに抗パーキンソン病薬として認可された.抗パーキンソン作用の出現機序としては,現時点までにチロシン水酸化酵素mRNA発現増加をともなうドパミン合成亢進と中等度のモノアミン酸化酵素阻害作用を明らかにし,T型Caチャネル阻害作用の関与が推定された.さらにゾニサミドは各種パーキンソンモデルで神経保護効果を示した.ゾニサミドは強力にドパミンキノン生成を抑制するが,これはS100β分泌を介した非活性型グリア増殖作用,およびグリアのシスチン・グルタミン酸トランスポーター発現増加作用を介してグルタチオン増加を示すことによることを明らかにした.さらに,ゾニサミドは強力な抗apoptosis作用を示した.今後,ゾニサミドの神経保護作用について臨床的に検証すること,SNP検索などをもちいて抗パーキンソン効果の個人差の機序を明らかにしていく必要がある.
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(臨床神経, 50:67−73, 2010)
key words:ゾニサミド, パーキンソン病, ドパミン合成, 神経保護作用

(受付日:2009年11月26日)