臨床神経学

症例報告

軸索型多発ニューロパチーを契機として診断にいたった高齢発症の神経線維腫症2型(NF2)の1例

伊関 千書, 高橋 賛美, 和田 学, 川並 透, 栗田 啓司, 加藤 丈夫

Corresponding author:山形大学医学部第3内科〔〒990-9585 山形市飯田西2-2-2〕
山形大学第3内科

症例は69歳の男性である.67歳頃から徐々に進行する歩行障害と聴力障害を自覚した.両下肢の遠位筋優位の筋萎縮,靴下型感覚障害がみとめられ,末梢神経伝導検査にて両下肢の軸索型ニューロパチーを呈していた.MRIでは,両側聴神経腫瘍と脊髄・腸腰筋内などに多発する神経鞘腫がみとめられた.NF2遺伝子のexon2に点変異(T161C:L54P)(heterozygous)がみとめられ,神経線維腫症2型(NF2)と診断した.本症例の脊髄・馬尾の多発腫瘍は,大きさと分布から末梢神経の圧排をおこしたとは考えがたく,多発ニューロパチーの原因として軸索・髄鞘自体の異常が推定された.
Full Text of this Article in Japanese PDF (601K) 会員限定

(臨床神経, 49:419−423, 2009)
key words:神経線維腫症2型, 軸索型ニューロパチー, 多発ニューロパチー, 高齢発症, 脊髄腫瘍

(受付日:2009年4月7日)