臨床神経学

症例報告

新規GFAP遺伝子変異(S398F)をみとめた成人型Alexander病の1例

末田 芳雅1)*, 高橋 哲也1), 越智 一秀1), 大槻 俊輔1), 滑川 道人2), 郡山 達男1), 瀧山 嘉久3), 松本 昌泰1)

Corresponding author:広島大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経内科学〔〒734-8551 広島市南区霞1-2-3〕
1)広島大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経内科学
2)自治医科大学内科学講座神経内科学部門
3)山梨大学大学院医学工学総合研究部神経内科学講座

症例は58歳女性である.54歳時より両下肢の異常感覚を自覚し,57歳時より左下肢の跛行を呈するようになった.その後筋力低下,歩行困難が徐々に増悪するとともに,左上肢の挙上困難,構音障害,嚥下障害が出現した.母,兄に類症をみとめていたことから常染色体優性遺伝形式の遺伝性疾患であると考えられ,MRI信号異常をともなう延髄,上位頸髄の萎縮の所見と併せて成人型Alexander病と診断した.GFAP遺伝子の検索によりこれまで報告のないS398F変異をみとめた.成人型Alexander病はまれな疾患と考えられているが,緩徐に脊髄症ならびに球麻痺を呈し,延髄,上位頸髄に限局した萎縮をみとめる症例の鑑別の一つとして重要である.
Full Text of this Article in Japanese PDF (766K) 会員限定

(臨床神経, 49:358−363, 2009)
key words:成人型Alexander病, glial fibrillary acidic protein, MRI

(受付日:2009年1月16日)