臨床神経学

症例報告

WEBINO症候群を呈した多発性硬化症の1例

鴨川 賢二1)2)*, 戸井 孝行1), 岡本 憲省1), 奥田 文悟1)

Corresponding author:愛媛大学大学院医学系研究科加齢制御内科学〔〒791-0295 愛媛県東温市志津川454〕
1)愛媛県立中央病院神経内科
2)現 愛媛大学大学院医学系研究科加齢制御内科学

症例は50歳男性で,多発性硬化症(MS)の進行により,外斜視をともなう両側内側縦束(MLF)症候群が持続した.単眼で固視すると他眼の外斜視が誘発される交代性外斜視を呈しており,wall-eyed bilateral internuclear ophthalmoplegia(WEBINO)に合致していた.MRIではT2強調画像にて橋被蓋傍正中部に高信号をみとめた.本邦でのWEBINOの報告はほとんどが脳血管障害の急性期にみられたものであり,MSの報告はきわめてまれである.本例のWEBINOの機序として,橋下部被蓋傍正中部の脱髄病変による両側MLF障害と持続的な傍正中橋網様体のimbalanceの可能性が示唆された.
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(臨床神経, 49:354−357, 2009)
key words:WEBINO, 多発性硬化症, 両側MLF症候群, 交代性外斜視, 傍正中橋網様体

(受付日:2008年12月22日)