臨床神経学

第50回日本神経学会総会

<シンポジウム3―3>中枢神経系の再生・次なる半世紀
脳に内在する神経再生機構

澤本 和延

名古屋市立大学大学院医学研究科再生医学分野〔〒467-8601 名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1番地〕

脳を構成するニューロンの大部分は胎生期あるいは生後の初期に神経幹細胞から生まれる.しかし,近年の研究によって成人の脳にも幹細胞が存在し,ニューロンが継続的に産生されていることが明らかになった.成熟した脳におけるニューロンの産生(adult neurogenesis)は,霊長類をふくむ様々な動物の側脳室の外側壁に存在する脳室下帯(subventricular zone:SVZ)で観察されている.脳室下帯で生まれるニューロンは長距離を移動し,実際に機能する場所へ到達した後で成熟する.本講演では,われわれが動物実験で明らかにした正常時・病態時におけるニューロンの産生・移動・成熟のメカニズムと,それを活かした虚血性脳疾患の再生医療の可能性について述べる.
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(臨床神経, 49:830−833, 2009)
key words:成体ニューロン新生, 脳室下帯, 神経幹細胞, ニューロンの移動, ニューロンの再生

(受付日:2009年5月21日)