臨床神経学

短報

HIV感染症を合併し,シクロスポリン投与を要した抗MuSK抗体陽性・重症筋無力症の1例

黒川 隆史, 西山 毅彦, 山本 良央, 岸田 日帯, 波木井 靖人, 黒岩 義之

Corresponding author:横浜市立大学大学院医学研究科神経内科学〔〒236-0004 横浜市金沢区福浦3丁目9番地〕
横浜市立大学大学院医学研究科神経内科学

症例は5年前にHIV感染症が判明し,以後HAART療法を行っている58歳男性である.眼瞼下垂,嚥下違和感が出現し精査の結果,重症筋無力症と診断した.抗AchR抗体は陰性,抗MuSK抗体が陽性であった.コリンエステラーゼ阻害薬,ステロイド薬により症状は改善したが,仕事を再開したところ再増悪したため,シクロスポリン投与を開始した.投与数日後から筋無力症状は改善した.HIV感染症と重症筋無力症合併例の報告はこれまでに11例あり,軽症が多いとされているが,本症例ではシクロスポリン投与を要した.シクロスポリンには抗HIV作用もあり,HIVを合併した重症筋無力症の治療において選択肢の一つになると考えられた.
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(臨床神経, 48:666−669, 2008)
key words:ヒト免疫不全ウイルス, 重症筋無力症, シクロスポリン, 抗MuSK抗体

(受付日:2008年4月1日)