第56回日本神経学会学術大会
大会長 西澤 正豊
新潟大学脳研究所 臨床神経科学部門神経内科学分野 教授

 第56回日本神経学会学術大会は、平成27年(2015年)5月20日(水)から23日(土)まで、新潟市の朱鷺メッセをメイン会場として開催させていただきます。

 折しも、新潟大学脳研究所神経内科学分野は平成27年4月に、講座開設以来ちょうど50年の節目の年を迎えます。昭和40年(1965年)4月、椿忠雄先生が初代教授として赴任され、5月には病棟も開設されました。その5月には新潟水俣病の公式発表があり、教室員は阿賀野川流域での住民検診に協力しました。昭和45年(1970年)9月にはSMONの原因がキノホルムと同定され、その製造販売が停止されています。脳研究所神経内科の歴史は発足の当初から、社会との深い関わりの中にありました。

 神経内科は主要臓器の一つである脳神経系を対象とし、脳神経系の疾患、とりわけ高齢化の進むわが国で増加している認知症、脳血管障害、さらに、てんかん、頭痛、めまいなどの頻度の高い脳神経疾患、またパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症などの脳神経系の難治性疾患に対して、専門的な診断・治療を行っています。さらに脳神経疾患のリハビリテーションや発症予防にも取り組み、介護・福祉とも密接に連携して、地域で患者さんと家族を総合的に支援していく役割をも果たします。日本社会における急速な高齢化に関連する幅広い領域をカバーする神経内科に対するニーズは、益々大きくなっています。

 こうした社会状況の変化と脳研究所神経内科の歴史的な経緯を踏まえて、今回の新潟大会におけるメインテーマは「社会の中の神経学~神経内科の社会貢献を考える~」としました。超高齢化社会において、神経学とこれを実践する神経内科の果たすべき役割を改めて見直す機会としたいと思います。神経内科はこの社会で、神経疾患の診療に関係して生じているさまざまな問題、例えば、認知症者の徘徊に伴う行方不明や事故、てんかんと自動車運転、人工呼吸器療法の中止などの難しい課題にも向き合い、的確な情報を発信する責務があると考えます。また、地域において認知症、脳血管障害後遺症、神経難病などの患者さんと家族を支えるために、神経内科医はしばしば、多職種連携によるチーム医療において中心的な役割を果たす必要があります。神経内科診療を支えるナース、テラピスト、保健師、薬剤師、栄養士、MSW、介護士、ケアマネージャーなど、多くの専門職種の皆様と合同の企画を用意し、よりよい連携のあり方を共に考える機会としたいと思います。併せて、神経内科の社会的役割を広く市民にも理解していただけるように、神経内科を啓発するイベントも連日開催します。さらに大会終了の翌日には市民公開講座も予定しています。

 2017年の世界神経学会WCNの京都開催を控えて、学会の国際化は避けられない課題です。新潟大会でも引き続き学会の一層の国際化に努め、英語によるセッションも企画します。一方で学会の約3分の2を占める神経内科医勤務医の皆様には、学会の場で、日常臨床に役立つ情報から最先端の研究成果に至るまで、さまざまな知見を効率よく吸収することが出来るように、プログラム編成に配慮します。さらに、将来の神経学会を担う若手医師や研修医,医学生も参加し、発表できるようにして、神経内科の魅力を共有できる場を持ちたいと思います。

 5月下旬の新潟は1年で最も素晴らしい季節です。美しい自然に恵まれた新潟に、皆様ぜひお越しください。神経内科のエッセンスを学ぶとともに、大いにリフレッシュしていただけるよう、鋭意準備をしております。皆様のご参加をお待ちしております。



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