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お知らせ

「神経学的検査チャート作成の手引き」

1.はじめに

 平成20年度診療報酬改定により「神経学的検査」が診療報酬の対象として認められた。検査所見については、意識状態、言語、脳神経、運動系、感覚系、反射、協調運動、髄膜刺激徴候、起立歩行などに関する総合的な所見を所定の神経学的検査チャートを用いて記載すること、その所見のサマリーを説明することが要件とされた。
 神経学的検査の記載は「別紙様式19」に準じて行うが、日本神経学会として、検査の行い方の基準を明確にし、その記載法を標準化する目的で、以下にチャート作成の手引きを示す。この「神経学的検査チャート作成の手引き」は、日本神経学会で現在作成中の神経学的診察法DVDと整合性を持たせて作成されている。

2.記載に際しての留意事項

 診療報酬の算定に当たっては神経学的検査チャートのすべての項目について検査を行い、その所見を記載することが原則である。しかし、患者の状態によっては、例えば意識障害のある患者、緊急的処置を必要とする患者などでは、これができないこともある。この場合はどの項目がどのような理由で検査できないかを余白もしくは3ページ目の「神経学的所見のまとめ」に記載する必要がある。  また、患者の状態により検査所見を患者に説明できない場合は、その所見を代理人(家族、付き添いなど)に説明し、その説明内容を付記しておく。
 なお、今回の神経学的検査チャートは項目としては足りない項目や不必要な項目、および修正が必要な部分もあり、それについては一部文中に言及してある。これらは次回の改訂時に反映させることになる。

3.記載の仕方

(1)意識・精神状態
a)意識

 意識レベルについてはまず清明か異常であるかを判断し、異常である場合はその内容(昏睡、昏迷、傾眠、せん妄、急性錯乱、興奮など)を記載する。意識レベルの客観的判定にはJapan Come Scale(JCS)またはGlasgow Come Scale(GCS)を用いるが、その判定基準は以下の通りである。記載に当ってはJCSおよびGCSのいずれかを用いればよく、両者を記載する必要はない。

Japan Coma Scale(JCS)による意識障害の分類

  • 刺激しないでも覚醒している状態(1桁で表現)
    (delirium, confusion, senselessness)
    1.だいたい意識清明だが、今ひとつはっきりしない
    2.見当識障害がある
    3.自分の名前、生年月日が言えない
  • 刺激すると覚醒する状態―刺激をやめると眠り込む(2桁で表現)
    (stupor, lethargy, hypersomnia, somnolence, drowsiness)
    10.普通の呼びかけで容易に開眼する
    合目的な運動(例えば、右手を握れ、離せ)をするし、言葉も出るが、間違いが多い
    20.大きな声または身体をゆさぶることにより開眼する
    簡単な命令に応じる、例えば離握手
    30.痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼する
  • 刺激しても覚醒しない状態(3桁で表現)
    (deep coma, coma, semicoma)
    100.痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする
    200.痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる
    300.痛み刺激に反応しない
Glasgow Coma Scale(GCS)(1977年)による意識障害の分類
スコア
A.開眼(Eyes Open) 自発的に開眼する E4
呼びかけにより開眼する 3
痛み刺激により開眼する 2
全く開眼しない 1
B.言語(Best Verbal Response) 見当識良好 V5
混乱した会話 4
不適切な言葉 3
理解不能の応答 2
反応なし 1
C.運動(Best Motor Response) 命令に従う M6
疼痛に適切に反応 5
屈曲逃避 4
異常屈曲反応 3
伸展反応(除脳姿勢) 2
反応なし 1

 意識が清明な場合は以下の検査を引き続き行う。

b)検査への協力

 患者の検査への協力の有無を判定し、協力的か非協力的かのどちらかを○で囲む

c)けいれん

 意識消失発作やてんかん発作の疑いで来院された患者に対しては、本人もしくは付き添いの人から、けいれんの有無を確認する。ある場合はその性状を記載する。

d)見当識

見当識の判定に当っては時間、場所、人物の3つについて質問する。障害のある項目を○で囲む。以下は質問例を示す。
 時間:今日は何月何日ですか。今の季節は何ですか。
 場所:ここはどこですか。
 人物:一緒にこられた方は誰ですか。貴方の横にいるのは誰ですか(看護師)。

e)記憶

 記憶の検査は即時記憶、近時記憶、遠隔記憶の検査に分けられる。以下の方法を参考に検査を行い、障害のある場合は、その内容を記述する。
 即時記憶:これから言う3つの言葉を繰り返してください。「サクラ、ネコ、電車」
 近時記憶:「昨日の天気はどうでしたか」「朝食は何を食べましたか」
 遠隔記憶:「あなたが卒業した中学校の名前を教えてください」

f)数字の逆唱

 数字の逆唱(3桁と4桁)を言ってもらう。正しくできた場合は、その数字を○で囲む。

g)計算

 100から7を順に3回引き算してもらう。その結果をチャートに記載し、正しい回答には○で囲む。この項目は計算能力とともに注意・集中力を検査しているが、便宜上ここに記載する。

h)失行、失認

 失行には(1)観念運動失行(2)観念失行(3)肢節運動失行(4)構成失行(構成障害)(5)着衣失行(6)口・顔面失行などがあるが、スクリーニングとしては観念失行と観念運動失行の検査を行う。検査の例として以下の方法がある。
 ―さようならと手を振ってください(観念失行)。
 ―これらを使って歯磨きをする真似をしてください(観念運動失行)。
さらに詳しい失行の検査をおこなった場合は余白または別紙に記載する。

 失認には(1)視覚性失認(2)聴覚性失認(3)触覚性失認(4)身体失認(5)半側空間無視(6)病態失認などがあるが、スクリーニングとしては半側空間無視の検査を行う。半側空間無視の検査方法として以下の方法がある。
 ―(線分抹消テスト)この紙にはたくさんの線がいろいろな向きで書いてあります。全部の線の中央に鉛筆で印をつけてください。
 ―(絵を見せて)この絵を模写してください。
さらに詳しい失認の検査をおこなった場合は余白または別紙に記載する。

(2)言語

言語の異常については、以下の3つの項目について検査を行う。

a)失語

 失語の検査では言語理解、発語、復唱の順番で失語の障害を確認する。これらの検査結果を総合して病型を診断し、チャートに記載する。検査の仕方(例)を以下に示す。
 ―日常的3物品(時計、めがね、財布、鍵など)を見せ呼称してもらう(物品呼称)。
 ―言語理解の検査として「右手で左の耳を触って下さい」などの命令をし、施行してもらう(ジェスチャーを加えないこと)。
 ―単文を言って復唱できるかを検査する(復唱);「今日の天気は晴れです」。

b)構音障害

 舌の動きの評価として、口蓋音「ガギグゲゴ」、口唇音「パピプペポ」、舌音「ラリルレロ」、あるいは「パタカ・パタカ・パタカ」、「今日は天気がよい」などの言葉を言わせて、構音障害の有無を判定する。構音障害の特徴を記載する。

c)嗄声、開鼻声

 いくつかの言葉を言わせて、嗄声、開鼻声の有無を判定する。

(3)利き手

問いかけるなどして利き手を確認する。

(4)脳神経
1)視力

 患者の訴えから異常の有無を把握し、視力低下が疑われるときは新聞などを30~40cm離して読ませることで検査する。視力が著しく悪い時は眼前の指数を言わせたり、手の動きが分かるか否かを聞く。必ず両眼を検査する。

2)視野

 視野の検査は対座法で行う。検査は視野の右上、右下、左上、左下の4か所を調べる。視野欠損があるときは、視野の周辺部より検者の指を中心部に向けて動かし、どこで見え始めるかを聞く。一側の眼の検査が終わったら、反対側の眼で検査をする。視野に異常がある場合は、視野図に欠損部位を示す。

3)眼底

 眼底検査は携帯型の眼底鏡(直像鏡)を用いて、乳頭(うっ血、萎縮など)、網膜(出血、白斑など)、動静脈(径、交叉など)の異常の有無を観察する。異常のある場合は、それを記載する。必ず両眼を検査する。

4)眼裂 5)眼瞼下垂 6)眼球位置(眼位)

 患者に遠くを見ているよう指示して、眼裂、眼瞼下垂の左右差を観察する。また、検者の右第2指を指標として患者の眼前に提示し、斜視の有無を判定する。眼位に異常がある場合は、斜視、偏倚、眼球突出の有無を記載する。

7)眼球運動 8)眼振 9)複視

 ここでは、検者の左手で患者の下顎部を押さえて、検者の右第2指を指標としてゆっくり動かし、左右・上下、右上、右下、左上、左下の8方向への動きを検査する。左右・上下の4方向では、最終地点で指標の動きを止めて、眼振の有無を観察する。この時、同時に、複視の有無を尋ねる。複視がある場合は、片眼を遮蔽して、複視が消失するかどうかを尋ねる(片眼遮蔽テスト)。
 眼球運動の記載はチャートに示す図を用いて、正常(0)から完全麻痺(-4)までの5段階で示す。眼振の記載法は下図を参考にして行う。

特掲診療料の施設基準に関わる届出書

10)瞳孔、大きさ 11)形

 患者に遠くを見ているよう指示して、瞳孔の大きさ(縮瞳、散瞳、瞳孔不同の有無)、形(正円、不正)を視診する。瞳孔が2mmより小さい時は縮瞳、5mmより大きいのを散瞳とする。瞳孔径を計測して、その大きさも記載する。

12)対光反射

 光量の十分なペンライトを用い、患者の視線の外側から瞳孔に光をあてる。光をあてた側の瞳孔(直接対光反射)と反対側の瞳孔(間接対光反射)の収縮を観察し、速、鈍、消失のどれかを記載する。必ず両眼を検査する。

13)輻輳反射(表中は輻湊であるが、日本神経学会としては輻輳を用いる)

 近見(輻輳と調節)反射の検査は、まず遠方を見ているときの瞳孔の大きさを観察し、続いて眼前10cmに指先を近づけて注視させ、両側眼球の内転と瞳孔の収縮を観察する。内転と瞳孔収縮のどちらか、または両方が見られない場合を障害とする。

14)角膜反射

 脱脂綿の先やティシュペーパーを細くよじったものを用い、患者に視線を左右または斜め上方にずらしてもらい、その反対側から角膜の虹彩部分(茶目の部分)に軽く触れ、瞬目を観察する。必ず両眼を検査する。

15)顔面感覚

 ティッシュペーパーや爪楊枝の先端を用いて、3枝の領域ごとに左右を検査する。左右差がある場合は、その境界を確認する。障害のある場合は2 ページ目の図に、その部位を示す。

16)上部顔面筋

 上部顔面筋の筋力の検査は、1)前頭筋、2)眼輪筋の2つの筋力を検査する。前頭筋では、眉を持ち上げさせて、額のシワ寄せの状態を左右で比較する。眼輪筋では、両眼をギューと固く閉じてもらい、睫毛が隠れるか(睫毛徴候)どうかで異常(麻痺)を判定する。

17)下部顔面筋

 口輪筋では、検者が見本を見せながら歯を見せるように「イー」と言ってもらい、口角の偏倚、鼻唇溝の左右差で異常(麻痺)の有無を判定する。

18)聴力

 聴力は指こすり、音叉などで評価する。指こすりの場合は、最初に検者の耳で指こすりの音を確認し、その音を患者が聞き取れるかを確認する。音叉の場合は、患者が聞こえなくなった時点で素早く検者の聴力と比較する。どちらの方法も聞こえ方に左右差があるかを尋ねることで判定することもできる。

19)めまい 20)耳鳴り

 めまい、耳鳴りの有無を患者から聞く。めまいの場合は回転性か、非回転性かを聞き、後者の場合は浮動感、眼前暗黒感、失神感など、めまいの性状を記載する。

21)軟口蓋

 軟口蓋・咽頭後壁の動きの検査は、口を大きく開けて、「アー」と少し長く声を出してもらって行う。この時、舌圧子やペンライトなどを使用して、軟口蓋と口蓋垂、咽頭後壁の動き、偏倚の有無、カーテン徴候の有無を観察する。

22)咽頭反射

 綿棒や舌圧子を半分に折ったもので咽頭後壁に触れ、咽頭筋の収縮をみる。正常では咽頭筋は速やかに収縮し、「ゲェ」となる。この反射は左右に分けて行う。反射が消失している場合は、その消失側を記載する。

23)嚥下

 嚥下障害(飲み込みに支障がないか)の有無を問診して記載する。障害のある場合は、唾液を飲み込めるかどうかを観察して記載する。

24)胸鎖乳突筋

 患者に側方を向いてもらい、顔を向けた側の下顎に検者の手掌をあてがい、「手で顔を押すので、負けないように頑張って力を入れてほしい」と告げて胸鎖乳突筋の筋力を判定する。この時、反対側の手で収縮した胸鎖乳突筋を触診する。必ず両側を検査する。
 胸鎖乳突筋の筋力を仰臥位で検査する場合は、頸部を前方に屈曲させて筋力を判定する。

25)上部僧帽筋

 患者に肩を挙上させ、検者は上からこれを押し下げて、その抵抗から筋力を判定する。

26)舌偏倚

 検者が見本を示した上で、舌をまっすぐに出してもらい、舌の偏倚の有無を観察する。偏倚のある場合は、右への偏倚か、左への偏倚かを記載する。

27)舌萎縮 28)舌線維束性収縮

 口を大きく開けて楽にしてもらい、舌の萎縮と線維束性収縮の有無を観察して、その有無を記載する。

(5)運動系
a)筋トーヌス

 痙縮や筋強剛、筋トーヌス低下の有無を判定する。上肢の筋トーヌスは肘関節の屈伸、前腕の回内・回外、手関節の屈伸で評価する。肘関節で検査する場合は、患者の伸側を軽く持ち、肘関節の屈曲伸展を適切なスピードで繰り返して検査する。
 下肢の筋トーヌスは膝関節の屈伸、足関節の底屈・背屈で評価する。膝関節で検査する場合は、検者の左手を患者の大腿遠位部にあて、右手で患者の足首を持って膝関節を屈伸する。
 上下肢とも必ず両側を検査する。

b)筋萎縮 c)線維束性収縮

 全身の筋肉を観察し、筋萎縮、線維束性収縮の有無を見る。筋萎縮、線維束性収縮がある場合は、その部位を記載する。また、右下の図を利用して、筋萎縮のある部位を明示してもよい。

d)関節

 全身の関節を観察し、変形、拘縮の有無をみる。変形、拘縮がある場合は、その部位を記載する。

e)不随意運動

 不随意運動には、1.振戦、2.舞踏運動、3.バリズム、4.ジストニア、5.ミオクローヌス、6.ジスキネジアなどがある。全身を観察し、不随意運動がある場合は、その部位と性質を記載する。

f)無動・運動緩慢

 仮面様顔貌の有無や歩行開始、立ち上がり、寝返りなどの動作を観察して判定する。

g)筋力

 徒手筋力検査は重力の負荷がかかる肢位で、他動的な関節可動域の最終点で最大の力を出してもらい、これに対して検者が抵抗して評価する。抵抗はゆっくり徐々に増すように加える。筋力は次の6段階で評価する。

6段階評価の基準

5:強い抵抗に抗して全関節可動域の運動が可能。
4:弱い抵抗に抗して全関節可動域の運動が可能。
3:重力に抗して全関節可動域の運動が可能。
2:重力を取り除けば全関節可動域の運動が可能。
1:筋の収縮はふれるが関節の運動はみられない。
0:筋の収縮もふれない。

1)頸部屈曲(前屈)

頸部を前屈してもらい、患者の前額を背側に押して、抵抗する筋力を判定する。

2)頸部伸展(後屈)

 頸部を後屈してもらい、患者の後頭部を前方に押して、抵抗する筋力を判定する。

3)三角筋

 両上肢を90゜まで側方挙上してもらい、肘関節のやや近位部を両手で上から押して筋力を判定する。必ず両側を検査する。

4)上腕二頭筋

 一側の肘関節を屈曲してもらい、患者の肩口を左手で押さえ、右手で前腕の遠位端を握り、肘関節を伸展して抵抗する筋力を判定する。必ず両側を検査する。

5)上腕三頭筋

 一側の肘関節を伸展してもらい、患者の肘関節のやや近位部前面を左手で押さえ、右手で前腕遠位端を持ち、肘関節を屈曲して抵抗する筋力を判定する。必ず両側を検査する。

6)手関節の背屈(手根伸筋群)

 手指を握り手関節を背屈してもらい、左手で患者の前腕を手関節の近くで握り、右手の掌側を患者の手背にあてがい、手関節を掌屈して抵抗する筋力を判定する。必ず両側を検査する。

7)手関節の掌屈(手根屈筋群)

 手指を握り手関節を掌屈してもらい、左手で患者の前腕を手関節の近くで握り、右手掌を患者の手掌にあてがい、手関節を背屈して抵抗する筋力を判定する。必ず両側を検査する。

8)母指対立筋

 母指と小指を対立してもらい、患者の母指と小指の基部に母指をあてて開き、抵抗する筋力を判定する。必ず両側を検査する。

9)腸腰筋

 大腿部が腹部につくような方向に股関節を屈曲してもらい(膝は曲げたまま)、大腿前面に手をあて、股関節を伸展させようとする時の抵抗筋力を判定する。必ず両側を検査する。

10)大腿四頭筋

 膝関節をピーンと伸ばしてもらい、大腿部を左手で下から支え、右手で足関節の近位部を上から握り、膝関節を屈曲させようとする時の抵抗筋力を判定する。必ず両側を検査する。

11)大腿屈筋群

 膝関節を最大屈曲してもらい、患者の下腿遠位部を右手で握って下肢を伸展するように引っ張り、抵抗する筋力を判定する。必ず両側を検査する。

12)前脛骨筋

 足関節を背屈してもらい、患者の足背に手をあてがい、足関節を底屈し抵抗する筋力を判定する(両側同時でもよい)。

13)下腿三頭筋(腓腹筋)

 足関節を底屈してもらい、患者の足底に手をあてがい、足関節を背屈し抵抗する筋力を判定する。必ず両側を検査する。
 立位で行う場合は、片足立ちになって踵を最大に浮かせる運動を繰り返してもらい、踵が十分に上がっていることを確認して筋力を判定する。必ず両側を検査する。

14)上肢バレー徴候(Mingazziniの上肢挙上試験)

 両手を前に伸ばして手掌を上に向けて指をつけてもらい、閉眼を指示して、上肢の降下、前腕回内、肘関節屈曲の有無を観察する。上肢が回内し、下がる場合を陽性とする。tPAの治療判定時には手掌を下に向けた位置で行われる。

15)下肢バレー徴候

 腹臥位で両膝関節を90度屈曲してもらい、そのまま両足が接しないように膝を曲げた状態を維持してもらう。下腿が下降した場合を陽性とする。本検査は腹臥位にすることがむずかしい場合もあり、必須ではない。

16)Mingazzini徴候

 仰臥位で股関節を90度くらい屈曲してもらい、下腿をベッドと水平になる状態で維持してもらう。下腿が下降した場合を陽性とする。

17)握力

 握力計を渡し、握る部位を指示して、原則として立位で片手を強く握ってもらう。必ず両側を検査して、その測定値を記載する。

(6)感覚系
a)触覚

 左右の前腕・下腿などにティッシュペーパー、綿などで触覚刺激を加え、触覚を普通に感じるかどうか、左右差や上下肢での差がないかどうかを確認する。必要があれば同一肢の近位部と遠位部に差がないかどうかも確認する。障害のある場合はその部位および性状(過敏、低下、脱失、異常感覚)を記載する。また、右側の図を利用して、異常のある部位を明示してもよい。

b)痛覚

 左右の前腕・下腿などに爪楊枝の先端などで痛覚刺激を加え、痛覚を普通に感じるかどうかを確認する。記載は触覚に準じる。

c)温度覚

 温度覚検査は音又などを用い、冷覚がわかるかを確認する。用意できる場合は試験管に40℃前後の温水や、10℃程度の冷水を入れて検査をしてもよい。記載は痛覚に準じる。

d)振動覚

 振動覚検査は音叉を用いて行う。音叉を叩いた後すぐに音叉を四肢末端の骨突出部(内果など)に押し当て、振動を普通に感じるかどうかを聞き、振動を感じなくなったら「はい」と合図させ、その秒数を記載する。

e)位置覚

 関節(位置)覚の検査は原則として下肢から上肢、遠位部から近位部へと検査を行う。下肢での検査では、患者に閉眼してもらい、検者の左手で患者の第1趾を第2趾と離れるように拡げ、右第1指と第2指で患者の第1趾の側面をつまみ、水平位から上または下に動かし、どちらに動いたかを答えてもらう。左右差や上下肢での差がないかどうかを確認する。

f)異常感覚・神経痛

 自発的に生じる異常な感覚や神経痛を示唆する痛みがある場合は、その部位を記載する。右側の図を利用して、障害部位を明示してもよい。

(7)反射

腱反射

 腱反射は正常、低下、消失、亢進、著明亢進で判定する。その記載法は下表に従い、右下の図を利用して、判定結果を記載する。

腱反射の評価基準と記載法

(+++):著明亢進(指で叩打など、ごくわずかな刺激で誘発できるくらい)
(++):亢進
(+):正常
(±):低下
(-):消失

a)下顎反射

 口を半分くらい開けて、楽にしてもらう。下顎の真ん中に検者の左第2指の指先掌側を水平にあてがい、指のDIP関節付近をハンマーで叩く。下顎反射は左右で記載する意味はなく、どちらかを斜線としてよい。

b)上腕二頭筋反射

 両上肢を軽く外転し、肘を約90度前後に曲げてもらう。肘関節の屈側で上腕二頭筋の腱を検者の左第1指掌側で押さえ、指をハンマーで叩く。必ず両側を検査して、左右を比較する。

c)上腕三頭筋反射

 肘関節を約90度屈曲した肢位をとってもらう。肘関節の約3cm近位部伸側をハンマーで叩く。必ず両側を検査して、左右を比較する。

d)腕橈骨筋反射(橈骨反射)

 両上肢を軽く外転、肘を軽く屈曲、前腕を軽く回内してもらい、手関節の2~3cm近位部で、腕橈骨筋を伸展する方向に橈骨遠位端をハンマーで叩く。必ず両側を検査して、左右を比較する。

e)膝蓋腱反射

 両膝を約120~150度に屈曲してもらう。膝蓋腱を確認し、その部位をハンマーで叩く。必ず両側を検査して、左右を比較する。

f)アキレス腱反射

 下肢を軽く外転して膝関節を軽く曲げる肢位、下肢を膝関節で軽く曲げて対側下肢の下腿前面に乗せる肢位、片膝を立てて膝を組んでもらう肢位などをとってもらう。足を左手で持ち、足関節を背屈した位置にして、アキレス腱をハンマーで叩く。必ず両側を検査して、左右を比較する。

表在反射

a)腹壁反射

 爪楊枝を用いて、臍を挟んで上中下3カ所で外側から内側に向かい擦る。刺激した側の腹筋が収縮し、そちら側に引っ張られた場合を反応ありとする。両側を検査して、消失している側を有意な異常(消失)とする。両側とも消失している場合は有意でない。本検査は必須ではない。

病的反射

 病的反射の判定(陰性、陽性)を記載するが、右側の図を利用して、判定結果を明示してもよい。

a)ホフマン反射

 検者の左第1指と第2または第3指で、患者の第3指のつけねを手背側から包むように持ち、手関節をやや背屈させる。次に検者の右第2指と第3指DIP関節付近で患者の第3指をはさみ、検者の第1指の掌側を患者の第3指の爪にあて、下方に向かってはじく。第1指が屈曲した場合を陽性とする。必ず両側を検査する。正常でも出現することがあり、左右差のある場合に意義がある。

b)トレムナー反射

 患者の手を軽く背屈させ、検者は左手で患者の第3指の基節を支える。検者の右第2指あるいは第3指で、患者の第3指の手掌側先端を強くはじく。第1指が屈曲した場合を陽性とする。必ず両側を検査する。正常でも出現することがあり、左右差のある場合に意義がある。

c)バビンスキー反射(バビンスキー徴候)

 患者の足を左手で固定して、爪楊枝の頭部で足底の外側を踵から上にゆっくりと第5趾のつけね付近までこする。第1趾の背屈がみられた場合を陽性とする。必ず両側を検査する。

d)チャドック反射

 患者の足の外果の下を後ろから前へ爪楊枝の頭部で擦る。第1趾の背屈がみられた場合を陽性とする。必ず両側を検査する。

e)その他の病的反射

 Snout(口尖らし反射)、Sucking(吸引反射)Palmomental(手掌頤反射)などの病的反射を行った場合に、その反射の項目を右側のカラムに記入して、陰性か陽性かを記載する。

クローヌス

a)膝クローヌス

 仰臥位、下肢を伸展させ、患者の膝蓋のやや近位側を母指と示指でつまみ、これを下方へ強く押し下げ、そのまま力を加え続けた時、連続して膝蓋が上下に動けば陽性とする。本検査は必須ではない。

b)足クローヌス

 検者の片手を膝の下にいれ、膝関節を屈曲した状態で他方の手を足底において急激に背屈させた時、連続して足が背屈底屈を繰り返せば陽性とする。

(8)協調運動
a)指-鼻-指試験(鼻指鼻試験)

 患者の第2指で、検者の右第2指の指尖と患者の鼻のあたまとの間を行ったり来たりする動作を行わす。検者の指の位置を随時移動させて、運動の円滑さ、振戦や測定の状況を観察し、異常の有無を判定する。必ず両側で検査する。

b)かかと-膝試験(踵膝試験)

 仰臥位で行う。足関節を少し背屈した状態で、踵を反対側の膝に正確にのせて、すねに沿って足首までまっすぐ踵をすべらせる。この動作を2~3回行ってもらい、運動の円滑さ、足のゆれや測定の状況を観察し、異常の有無を判定する。必ず両側で検査する。

c)反復拮抗運動(手回内・回外試験)

 両手を前に出し、軽く肘を屈曲して手の回内と回外をできるだけ速く反復してもらう。変換動作が拙劣かどうかを判定する。

(9)髄膜刺激徴候
a)項部硬直

 仰臥位で枕をはずし、頸部の回旋や側屈の状態を確認した後、ゆっくりと頭部を前屈させ、抵抗(項部硬直)の有無を判定する。

b)ケルニッヒ徴候

 仰臥位で膝関節と股関節を90゜屈曲させ、この状態で膝関節を伸展させる。この時膝関節伸展に抵抗があって充分に伸展できないときを陽性とする。

(10)脊柱
a)弯曲

 脊椎の弯曲の状態を視診で判定する。異常がある場合は、側弯、前弯、後弯のどれであるかを記載する。

b)ラセーグ徴候

 仰臥位で、下肢を伸展させたままで挙上する。下肢に疼痛を訴え、それ以上足を挙上できない場合を陽性とする。

(11)姿勢

 立位および座位における姿勢を観察し、異常がある場合は、その特徴を記載する。例えば、パーキンソン病や脳血管障害による痙性片麻痺では特有な姿勢をとる。

(12)自律神経
a)排尿障害

 排尿障害の有無を問診し、異常がある場合はその性状(尿失禁、排尿困難、尿閉など)を記載する。

b)排便障害

 排便障害の有無を問診し、異常がある場合はその性状(便失禁、排便困難など)を記載する。

c)起立性低血圧

 起立性低血圧(立ちくらみ)の有無を問診して記載する。

(13)起立・歩行
a)ロンベルク試験

 両足のつま先をそろえて立たせ、開眼のままで身体が動揺しないかをしばらく観察した後、閉眼させる。閉眼により、体幹が動揺した場合を異常と判定する。

b)マン試験

 両足を前後に縦一直(前足の踵と後足のつま先をつける)にして立たせ、開眼のままで身体が動揺しないかを観察し、体幹が動揺した場合を異常と判定する。

c)歩行(通常歩行)

 診察室内の空いた場所(廊下など)で自由に歩いてもらい、異常の有無を判定する。異常がある場合は、その特徴を記載する(片麻痺歩行、対麻痺歩行=痙性歩行、失調性歩行、パーキンソン歩行、小刻み歩行、動揺性歩行、鶏歩など)。

d)つぎ足歩行

 一側の足の踵を他方の足のつま先に付けるようにして、直線上をつぎ足で歩かせる。ふらつきがある場合を不可能と判定する。

e)しゃがみ立ち

 しゃがんだ姿勢から起立させて、登攀性起立や体幹の動揺がないかを見る。起立困難、ふらつきがある場合を不可能と判定する。

4.参考資料

1)日本神経学会.神経学的診察法DVD.2008
2)田崎義昭,斎藤佳雄.ベッドサイドの神経の視かた.南山堂
3)後藤幾生.神経疾患の診察・診断の仕方.新興医学出版社
4)水野美邦.神経内科ハンドブック.鑑別診断と治療.医学書院
5)岩田誠.神経症候学を学ぶ人のために.医学書院
6)水野美邦,栗原照幸.標準神経病学.医学書院
7)豊倉康夫,萬年徹,金澤一郎.神経内科学書 第2版.朝倉書店

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