臨床神経学

症例報告

当初頸椎症性脊髄症と考えられたが,ガドリニウム造影後MRIが診断の一助となった神経サルコイドーシスの1例

松吉 彩乃1), 内山 大治2), 川波 敏則3), 稲森 有貴子1), 白石 渉1)*

1)小倉記念病院脳神経内科
2)小倉記念病院放射線科
3)小倉記念病院呼吸器内科

70歳女性.両上肢のしびれがあり前医を受診,頸椎症性脊髄症の診断で椎弓形成術を施行された.その後,しびれは著変なく経過したが,術後半年頃から両上肢巧緻運動障害と歩行障害が亜急性に進行した.頸椎MRI で腫大を伴う脊髄長大病変を認め,一部はガドリニウム造影効果を認めた.造影MRIの所見からサルコイドーシスを疑い,気管支肺胞洗浄でCD4/8比の上昇を,ガリウムシンチグラフィーで肺門リンパ節の集積を認め,神経サルコイドーシスと診断,ステロイドと免疫抑制剤による治療で症状の改善を得た.頸椎症性脊髄症と神経サルコイドーシスの鑑別に造影MRIでの増強病変の形態評価が有用とされ,文献的考察を加えて報告する.
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(臨床神経, 64:339−343, 2024)
key words:ガドリニウム造影MRI,頸椎症性脊髄症,サルコイドーシス,脊髄長大病変,椎弓形成術

(受付日:2023年8月30日)