臨床神経学

症例報告

呼吸不全による心肺停止を呈した上位頸髄梗塞の1例

岡田 怜子1), 村上 泰隆1)*, 町山 彩美2), 神野 隼輝1), 秀嶋 信1), 神吉 秀明1)

1)大阪警察病院脳神経内科
2)大阪警察病院ER・救命救急科

症例は46歳男性.突然の頸部痛と体動困難が生じ,救急隊接触後に心肺停止となった.搬送中に蘇生したが来院時Glasgow Coma Scale E1V1T1の意識障害があり,PaCO2 127mmHgと高値のため気管挿管を実施した.PaCO2低下に伴い意識は改善したが,四肢の完全弛緩性麻痺,C5以下の痛覚低下,腱反射・足底反応・肛門反射の消失を認めた.脊髄MRIでC2〜C4レベルの前脊髄動脈領域でT2および拡散強調像の高信号を認め脊髄梗塞と診断した.四肢筋力は緩徐に改善したが呼吸器は離脱不可だった.前脊髄動脈領域の頸髄梗塞では呼吸不全により心肺停止となりうるため,蘇生後には上位頸髄梗塞を鑑別に入れるべきである.
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(臨床神経, 64:333−338, 2024)
key words:頸髄梗塞,心肺停止,呼吸不全,前脊髄動脈

(受付日:2023年8月9日)