臨床神経学

総説

急性肝性ポルフィリン症:急性発作の発症機序と病態生理

安田 真紀子

マウントサイナイ医科大学遺伝・ゲノムサイエンス科

ヘムはほぼ全ての生物にとって必須の鉄含有分子であるが,ヘム過多は細胞毒性を起こすため,ヘムの細胞内濃度は厳密に制御されている.急性肝性ポルフィリン症(acute hepatic porphyrias,以下AHPと略記)はヘム生合成酵素のいずれかの活性低下により発症する稀少遺伝性疾患であり,様々な誘因により急性神経発作を呈する.AHPの急性発作の症状は非特異的であるため,他疾患と誤診されることが多い.AHP患者における急性発作の発現機序やヘム生合成経路の異常を理解することは,AHPの正確かつ迅速な診断や適切な治療の実施につながる.そこで本総説ではAHPの急性発作時の分子および生化学的な変化に焦点を当て,急性発作の病態生理について現時点で明らかになっていることを概説する.
Full Text of this Article in Japanese PDF (1632K)

(臨床神経, 64:8−16, 2024)
key words:急性肝性ポルフィリン症(AHP),ヘム生合成,急性発作,デルタアミノレブリン酸合成酵素1(ALAS1)

(受付日:2023年3月14日)