臨床神経学

症例報告

脳梗塞急性期にMRIにて血管壁の造影増強効果を認めた髄膜血管型神経梅毒の1例

宮武 仁志1)*, 小栗 卓也1), 櫻井 圭太2), 武藤 義和3), 加藤 秀紀1), 湯浅 浩之1)

Corresponding author: 公立陶生病院脳神経内科〔〒489-8642 愛知県瀬戸市西追分町160番地〕
1) 公立陶生病院脳神経内科
2) 国立長寿医療研究センター放射線診療部
3) 公立陶生病院感染症内科

46歳男性.歩行時のふらつきを主訴に来院し,頭部MRIで多発脳梗塞を認め入院した.42歳頃に梅毒感染リスクを伴う行動歴があり,一過性に皮疹が出現するも医療機関未受診であった.入院時の血清,脳脊髄液の梅毒反応陽性より髄膜血管型神経梅毒と診断した.ペニシリンG大量療法後は再発なく症状も改善した.診断時のMRアンギオグラフィーでは責任血管の1本である右上小脳動脈の近位部に描出低下があり,造影MRIにて同部位の血管壁に造影増強効果を認めたが,治療後にはこの効果は消失した.血管炎が疑われる脳梗塞では神経梅毒を鑑別にあげる必要がある.また血管壁の造影増強効果の変化は血管炎の経過を反映している可能性がある.
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(臨床神経, 63:588−591, 2023)
key words:神経梅毒,血管炎,造影3D-T1強調画像,MRアンギオグラフィー

(受付日:2023年6月22日)