臨床神経学

短報

弓道における異常な運動「もたれ」は動作特異性局所ジストニアの特徴を有している

小木曽太知1), 大野 陽哉2), 鈴木 彩輝1), 下畑 享良2)*

Corresponding author: 岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野〔〒501-1194 岐阜市柳戸1-1〕
1) 岐阜大学医学部医学科6年
2) 岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野

弓道における異常な運動(いわゆるイップス)のうち,「もたれ」は狙いを定めたときに意図したタイミングで矢を放てない状態を指す.私達は「もたれ」が動作特異性局所ジストニア(task-specific focal dystonia,以下TSFDと略記)である可能性を考え,「もたれ」を呈する3例,対照群として弓道での異なるイップスの一種「早気」3例,いずれも認めない3例に問診と表面筋電図を行った.結果,「もたれ」の特徴として,定型性,感覚トリック,早朝効果が確認されたが,「早気」ではこれらの所見は認めなかった.また検査中に「もたれ」が出現した2例中1例で,上肢の異常な拮抗筋の共収縮を認めた.以上より,「もたれ」はTSFD の特徴を有している可能性が示唆された.
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(臨床神経, 63:532−535, 2023)
key words:弓道,動作特異性局所ジストニア,表面筋電図,共収縮,イップス

(受付日:2023年2月4日)