臨床神経学

症例報告

右前大脳動脈領域梗塞により交叉性失語を呈した1例

石原 健司1)*, 加倉井 美沙2), 遠藤 佳子3), 小林 一彦4), 旭 俊臣1)

Corresponding author: 旭神経内科リハビリテーション病院神経内科〔〒270-0022 千葉県松戸市栗ヶ沢789-1〕
1) 旭神経内科リハビリテーション病院神経内科
2) 旭神経内科リハビリテーション病院リハビリテーション部
3) 東北大学病院リハビリテーション部
4) 旭神経内科リハビリテーション病院精神神経科

症例は68歳,右利き女性で,利き手の矯正歴,左利きの家族歴はない.高血圧性緊急症で入院中に意識障害,下肢に強い左片麻痺,発話障害,左半側空間無視を認め,MRIにて右前大脳動脈領域に急性期梗塞を示唆する所見を認めた.亜急性期の言語症状として開始困難,速度低下,抑揚の消失,音韻性錯語を主徴とする発話障害を認め,理解,復唱,読字,書字でも障害が見られ,「変則型」交叉性失語と考えた.両上肢の失行,構成障害,左半側空間無視は見られなかった.右前大脳動脈領域梗塞による交叉性失語の報告は少ないが,失語症状,合併症状は症例により異なり,半球側性化の個人差を反映していると考えられた.
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(臨床神経, 63:450−455, 2023)
key words:交叉性失語,変則型,前大脳動脈,脳梗塞,半球側性化

(受付日:2022年3月17日)